教室の隅でなまえはつまらなさそうに紙パックのココアに突っ込んだストローを指先でくるくる回していた。視線は窓の外やら天井やら黒板の端を行ったり来たりしている。あんまり遠くから眺めても気づきそうになかった。昼休み終了までまだまだ。
「昼にココア飲むとか自殺行為だな」 「何でよ」 「眠くなるぞ」 「あー、別に寝てもいいや」
うんと伸びをして彼女は机に伏してしまった。ストローの入り口は吸いきれなかったココアで茶色く濡れている。髪の色とよく似ていた。直射日光が彼女を刺激して、溶けてしまいそうだとすこし不安になった。
「要くんってば」 「何だよ」 「子供みたいなところもあるもんね」
反論してやろうと開いた口に無機物が突っ込まれる。細くて真ん中には穴が通っているものなあんだ。風味程度には檸檬も香っていいと思ったが何もなかった。このまま眠りについた彼女をココア片手に暫し眺めて踵を返すのは腑に落ちない。どうしようもなく心地よい太陽に力なく差し出された白い腕に意識が奪われていくのを、俺はしかと見届けていた。
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