冥界に来てから自分の人生が思った以上に平凡だった事に気づかされた。同時に自分の色が空気がどんどん透明になっていくような気もした。心地よいのが不思議なくらいだ。
「なまえさんはあまりに無防備だと思います」
死装束が鬼男の爪で大雑把に裂かれたせいで胸元にかすり傷ができた。事の展開が早すぎて動揺する暇もなく壁に押しつけられて口が塞がれる。時折当たる鋭い犬歯に不覚にも萌えた。
「こうやってすぐに犯される」 「鬼男さん、タンマ効きますか」 「効きません」 「話し合いましょう」 「嫌です」 「この強情」
余程私の態度が気に食わなかったのか軽く首を絞めあげられた。むせた隙に装束の帯が外され私の弱いところが狙われる。思わず前のめりになると征服感に満ちた笑い声が聞こえた。やられっぱなしでいられるかと駄目元で彼の角に触れたら見事にビンゴ。
「角、感じるんですね」
今度は私が非凡を笑う番だ。
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