電車の定期が切れて電車賃がないという理由だけでなまえが学校をさぼって僕の家に来た。敷きっぱなしにしていた布団に潜り込んで朝ごはんを要求してくるあたり確信犯ではないかと思われる。

「遅刻しかけてたから必死こいて準備したのにまじありえねー」
「それを休む理由にする方がありえねー」
「いいの。今日は授業もそんなにないし」

テーブルにご飯を並べると声をかけるより先に匂いを嗅ぎ付けたなまえが足早に布団から出てきて椅子に座った。箸を出してやるといただきますと合掌をしてすぐに食らいつく。寝不足だった僕はテレビの電源を付けながらこっそりあくびをした。

「妹子のご飯おいしい」
「それはどーも」
「毎日作ってほしいなぁ」
「毎日遅刻する気か」
「…はあ?馬鹿じゃないのこの安納芋」
「僕は芋じゃ、えっ」

なまえの方を見ると口いっぱいにサラダを頬張ってしかめっ面をしていた。口から顎にかけて垂れていくドレッシングを見つめながら僕は笑いたかったり困りたかったりする気持ちに押し潰されそうだ。とりあえず彼女の鼻をつまんで息を止めた。








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