ふわあんとなまえのあくびが零れた。その一部始終を寝起きの目で見ながら密かに僕にも移ってくることを期待した心臓だけど、いくら待ってもくしゃみすら出てこなかった。
「おはようございます」 「おはよう」 「めっちゃ眠たそう」 「なまえこそ」 「眠い。お腹すいた」
なまえはもぞもぞベッドから起き上がると、台所へ向かい冷蔵庫やらを漁りだした。彼女は冬に薄着をするのが好きな人だから今日も真夏みたいな格好をしてる。大きめのTシャツに太もも丸見えの短パン、しかも床にぺたんと座ってこちらに背を向けているのだから無防備極まりない。
「……ねえ」 「うわびっくりした。重い重い」 「なまえ食べたい」 「へえー」 「嫌?」 「朝からするなんて。私のような老体には無理ですわーっ」 「大丈夫。優しくするかもしれない」 「可能性低くね?」 「拒否しなくていいの?」 「言ったところで変わらないでしょ」
さっきまでなめ茸の瓶を持ってた左手が僕の頬を撫でるような手つきでなまえ自身の唇までリードする。リップも何もついてない冬に乾燥した唇を頂いていくうちに、最初は冗談だったはずなのにその気になってきてしまった。なまえのお腹の前で揃えていた両手を上に上に、女性的な部分に触れて左肩にキスを。くすぐったそうな声を出しながら体重を任せてくる彼女は笑顔で楽しそうだ。冷蔵庫が開けっ放しなのも忘れて、僕たちは年中忙しない。
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