本当は夏休みの自由研究用に買って結局使わなかったプラネタリウム作成キットを見つけた。あれはたしか小五のころだっただろうか。もう八年も前だ。年取ったなぁ、なんて老けたセリフを呟きながらその箱を開けた。

「穴開けるだけでいいんだ。かんたーん」

説明書で星座の場所を確認しながらひとつひとつ綺麗に穴を開けていく。最初は簡単だと思ったけど、意外と面倒で時間がかかった。すべての作業が終わるまでに要した時間は、間に他のことをしたせいもあるけど、五時間くらい。早速部屋の電気を消して代わりにプラネタリウムの内側の電気をつけると、私の拙い四畳半は青白く輝いた。

「すごい。きれい」

しばらく自作プラネタリウムに見惚れていると部屋の隅に星が少ない場所があることに気づいた。なんかそこだけへんに寂しい。どうせ自分だけのプラネタリウムになるのなら私だけの星座をつくろう。私は一際大きな穴をひとつ開けた。

「音也座……、なんて」

あまりにも恥ずかしい独り言に耳まで赤くなった。同時にそんな星をつくったことにもちょっぴり後悔した。部屋の隅には消えそうもないほどまぶしい光がひとつあって目が眩んでしまいそうになる。高さ的にも頑張ったら届きそうだ。届かないかもしれないけど。不安な気持ちを抱えたままあの星をめがけて踵を浮かせる。…届いた。

「……届いたし」

案外あっけなかった。むしろ若干へこんだ。現実との差を叩きつけられたみたい。実際には絶対届かないの、知ってるでしょ。光源のほうを振り返ると穴から漏れた光線が私の体じゅうに天の川を映し出していた。本当に夜空の一部になって君を閉じこめられたならよかったのに。遠くテレビの音の中からはいつでも、昔とかわらない音也の声が聞こえてくる。








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