濡れた髪からラベンダーの香りがしている。そういえば最近シャンプーを変えたってきいた。すれ違った瞬間に脳をめぐる血液が沸騰したみたいで全身が熱くなる。こう見えておしとやかながらに激しく君がすきなんだよ。
「ほら、風介も出てきなよ」
日差しが得意でない私を海へ連れ出そうと水着姿の君が手を招く。君こそその白い肌が焼けちゃいけないから内にこもっていればいいのに。私は丁重に断ってブルーハワイのかき氷を食べていた。海で輝く君を見ながら頭痛を抑えて食べていた。
「風介、彼女つくればいいのに。もったいないなぁ」
季節はすこし変わって秋になる。君はずいぶんと大人になっていよいよ私の前から離れなくなった。もう君には綺麗な白なんて残っていないのかもしれない。指先や唇が赤く染まってる。誰か知ってる男のものになったんだって?みんな知っているよ。
「晴矢が待ってるからいかなくちゃ」
いとも簡単に私に背を向けて去る。晴矢の前ではきっとぐずるんだろうなと思うと無性に吐き気を催した。なぁ君よ。あの日私に言った言葉はこのことを言っていたのか。日焼けしていたのは私のほうだった。紫を朱色で汚す夕焼けをきつく睨んでも慰めるつもりのそれにはちっともこたえない。私はインドア派なんだよ。眠るような心地よい恋がしたかったのだ。まだこの心臓は冷えたり加速したりを繰り返しているけれど。
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