静かになった君の肩に頭を預けてわずかに息を止めてみた。なまえもほんの少し緊張しているようで、小さく消えてしまいそうな息が俺の耳にかかる。柔らかな皮膚に温度は期待できない。だから俺で精一杯温めようとしたよ。努力をしてみたよ。結果は聞かないでね。

「どうしたの?頭撫でちゃうよ」
「うん。なんでもないよ」
「祐希の髪はさらさらでうらやましいなあ」
「よく言われます」
「ふふふ」
「?」
「なんでもないよ」

俺が隠した心内文をそっくりそのまま返されて、なんだか少し戸惑った。なまえも戸惑ったとは思わないけど、微妙な居心地の悪さと不愉快さが胸を逆撫でする。どうせなら今の君みたいに、ただやさしく、上から下へのワンテンポで触れて欲しかった。

「なまえ、いいにおいがする」
「えー、しないよ。はずかしいー」

体を捩らせるだけで逃げはしないなまえになぜだかジェラシーを感じる。額がそろそろ彼女の肩で赤く跡を残しそうで、俺の鼻はいまだににおいを覚えてはくれなくて、口の中がどんどん潤う。あぐらの上で待機する両手に問いかける。これから、どうしたい?

「ねえ祐希。たいせつな話をするから、何も言わずに聞いておいて」

残念。タイムオーバー。頷いた拍子の青ざめた笑みを知る由もなく、君は深く息を吸い込んだ。その空気すらも音でさえもうつくしくて、悲しい。








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