彼女は深く色づいた目で俺を見上げる。何も言わない俺に時折ため息を吐いては、手櫛で髪をといたり赤い唇を舐めたりしていた。何も楽しい事なんてない。これから先もずっと、彼女がそんな態度でそこにいる限りは。
「お尻を叩いてあげようか」 「いらねぇよ」 「グリーンは何が好きなの?」 「バトルと女」
その二つに関しては、彼女は申し分なかった。バトルでは何度か負かされそうになった事もあったし、顔作りも悪くはない。しかし問題はそのもっと手前のところで悠然と構えているのだ。ズボンの上から股間に噛みつかれても、とても愛情表現とはとれなかった。
「……はぁ、お前も変わんねぇよな」
ズボンに染みつく彼女の唾液が汚らしい想像を促す。こちらを見上げて口を離した隙に俺の股間と糸を引くその口へキスをした。やけに犬歯が目立つ。歯列をなぞると縋るように抱きついてきた。おおよそ彼女は人間にはなれそうになかった。
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