ソファに座っていただけだったはずだ。急な展開に頭がすこし遅れる。彼は突如として私の脇腹に腕を通し、半ば押し倒す勢いでキスをしてきた。私の家であるとはいえ、恋人であるとはいえ、何をやっているんですかというのが率直な感想。
うそ。実は少しどきどきしてて、嬉しかったりもしないでもなくもなくない。あれ、結局どっちだろう。

「…盛っ、ちゃったの?」
「まあ」
「じょ、じょ、冗談はよしこさん」
「誰がジョジョでィ」

私は総悟の腕を掴んで後ろに距離をとる。ああ、顔、あつい。ぜんぶぜんぶ総悟のせいだ。栗色の髪の下からのぞく双眼が驚いたようにぱちぱちとまばたきした。そして私の様子を見てニヤリと笑い、本格的に覆いかぶさってきた。ソファのスプリングが軋む音をこんなにも変な気持ちで聞いたのははじめてだ。

「やめろこのケダモノ」
「男はみんな獣だ狼だって言うだろィ」
「じゃあ総悟には場をわきまえられる狼になってほしいな!」
「俺ァ欲望に忠実なんで」
「ばかやろう」

けれど最終的には手を出されないまま終わるこのノリ、そろそろ終止符を打たなければいけないよね。








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