山崎のしたいことはセックス。よくよくわかった。ただ私にはそれがよくよく理解できない。何故彼女が出来ると手を繋ぎたがる?キスをしたがる?セックスをしたがる?そんなのセフレ作って頼めばいくらでもやらせてくれるでしょ。嫌われたくないから言わないけど。
「ねえ、いいかな」
嫌だ。でもセックスには興味ある。我を忘れる程の快楽なんて言われたら、そりゃあ一度は味わってみたいじゃないか。ただ、なんというか、恋人になったから許される行為としてするのはちょっと抵抗があるだけ。もうなんだろう、わけわかんない。ごめんね山崎。
「今日、生理なの」
指の先が小さく震えていた。それは山崎自身も同じ。セックスの誘いなんてチキンへタレの彼には大冒険だったに違いないのだ。それをしかも、私のことは考えずに言ったふうに言われて、恥ずかしいだろうね。恥ずかしいだろうよ。私なら穴があったら入りたいくらいだもん。…(笑)
「そ、そっか。ごめん、忘れて」 「いや、ううん!また今度、」
また今度しよう。言いかけて山崎と目が合った。驚いたような嬉しそうなような期待を孕ませた目と会った。はじめまして。私がへたっと笑うと山崎も同じようにへたっと笑って何故か和んだ。このままでいいよ山崎。友達みたいなままがいい。二人の矛盾も黙って飲み込み、我慢して、愛を歌う。
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