赤い見覚えのあるアイマスクが家の玄関に落ちていた。車庫に車はない。今この家には誰もいないようだ。恐ろしい予感に身震いを一つしてドアを開けたところで、奴の声は背後からやってきた。

「よォみょうじ」
「うわぁ沖田先輩」
「先輩がわざわざ来てやってんだから歓迎しろィ」
「だって私先輩に来て欲しいなんて一言も言ってないですもん」

私ごと室内へ押し入ろうとする先輩の体を押し返そうとした手は呆気なく掴まれ、彼の不法侵入をやすやすと許してしまった。こうなったらトイレにでも逃げ込もうと背を向けると、今度は腹に腕が回ってきて捕まる。かちゃん、と鍵のかかる音。彼は既に私の寝室の場所を把握できるほど回数を重ねているようだ。

「ちっせぇケツしてんな」
「噛まないでください」
「マジで桃なんでねェの」
「先輩!」

私の文句には一言も返事をしないまま、時折独り言のようなものをぼやいては尻を愛でる。おかしな男だ。そいつに囚われる私もそこそこの変人だ。

「先輩が変な事するから、下着びちゃびちゃになっちゃったじゃないですか」
「涼しいだろィ」
「寒気がするくらいです」
「じゃあ、あっためてやらァ」

どこか誇らしげな声に見合うほどの熱量があてがわれて一気に貫かれた。どうやら下着が濡れていたのは何も先輩のせいだけではなかったらしい。彼が気づいてないのをいい事に、私はただ外の音に耳を澄ませていた。








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