小説 | ナノ

 04

「あなたに、生徒会に入っていただきたいの!」

彼女の言葉に私は唖然とした。


*月子視点終





「あなたに、生徒会に入っていただきたいの!」






私は慌てている彼女にそう笑顔で言った。
いや勧誘した。

「・・ダメ?」

彼女は私の言葉を聞くとびっくりしているらしく
口が空いたまま、ふさがらない状態になっていた。

「ええ?!?!
いやいや!!!・・・あのえっと・・えっと・・・!!
なんで私なんですか?!?!?」

私はあわてている彼女を見て、少し笑った。
この子は面白い。いい生徒会役員になってくれる筈。
月子ちゃんはずっとあわあわしていたので、私は口元に笑みを蓄えたまま
彼女の隣に座って、説明をした。

「いまは入学式があるから大まかに説明するね?」

というと、彼女はコクンと頷いてくれた。
物分りのいい子は大好きだよーと頭を撫でるとたちまち
彼女は赤面した。
と、それはおいといて私は琥太にぃがくれたお菓子を食べながら


「星月学園の学科は何個分かれてるかわかる?」


とこの学園の説明をまず、始めた。
たぶん月子ちゃんの担任の直獅くんが説明をしているのは
このことだろうからみんなに遅れないように、+α・・詳しくなるように
私は大まかに話し始めた。


「この学園はあなたの学ぶ学科の天文科、神話科、西洋占星術科、
宇宙科、星座科、そして生まれつきの能力が無いと入れない星詠み科があるんだ」


ここまで大丈夫?と目を合わせて聞くと彼女はコクンと頷いた。
それを確かめたあと、私は再び微笑んだ。
琥太にぃは珍しく仕事をしている。
と、言ったら確実に怒られるだろうし、二度と紅茶を飲ませてくれないだろうから
私は彼を思考から追いやった。


「天文科はどんなことを学ぶかわかる?」


「えっと・・天体の専門的なことを学ぶ・・学科・・?」


月子ちゃんは本当に可愛いなー。
女の私でもころっとやられちゃう上目使いを駆使している。
いやー可愛い。
でもその説明だけじゃあ足りない。


「そうだね。付け足すけど天文科は天体の専門的なことを学ぶ、ぷらす!
観測と研究が必要な学科です。だから・・普通科みたいなとこかなぁー。
じゃあ次。西洋占星術科はご存じのとおり、西洋占星術を学ぶ学科だよ。
この学科は誰でも入れる科なの。宇宙科は将来NASAに行きたい人が学ぶ学科かな。
このこともあとで説明するね。いまはあなたのことで精一杯だから。」

と、どんどん説明していくと彼女は必至についてきてるようだ。
真面目に話を聞いてくれている。このあと一樹に生徒会に再度、入ってくれるように
頼むのだが・・・この子は私が回収できるかな?
それはそれで嬉しい。女の子の友だちが増えるのは嬉しいし。

「それで、先輩・・星座科と星詠み科って・・いったい・・」


私が思考を巡らせているとなんと彼女から質問がきた。
どうやらさすが星バカ。興味を持ってくれたようだ。
よかったね琥太にぃ。星月学園のことに興味を持ってくれた生徒が増えたよ。
私は微笑んでそうだったねと口を再び開いた。


「星座科は天文科と似てるよ。天文は天体の記録と観察、観測をして、
専門的なことを学ぶって言ったでしょ?・・・うん、星座科は
星のことをひたすら学ぶの。星を管理して、記録して、新しい星座を作る科だよ。
すごく楽しそうでしょ?毎年、8月、11月、2月にある星見会は楽しみにしててね」

私はいったん説明を止め、のどを潤すため、紅茶をぐいっと飲んだ。
彼女も同じように飲んだ。


「さて。最後の、生まれつきの能力が無いと入れない星詠み科について、
説明するね」


月子ちゃんは待ってましたと言わんばかりに、目を輝かせて
うんと頷く。なんて可愛い後輩なんだ。
私はそんな彼女を再びなでなでした。
そうやって目を閉じると本当にネコみたいだ。
君はこの学園で何人の男性を虜にするんだろうね。
私は先日みた星詠みの予言で彼女を心配していた。
一樹もだろう。だからなのかは知らないけど私は
彼女を傍においておきたい。いざというときに守れるから。
もう誰の命も落とさせないために。


「星詠み科の説明をする前に少し、“星詠み”について説明するね。
”星詠み”っていうのはすごく難しいんだけど・・そうだなぁ。簡単に話すと
未来を予知する能力・・かな。その力の差はそれぞれで、生まれつきすごい強い力を
持ってる子もいるんだよ。その力の差は力前。
星詠みの力が強くなる代わりに命を蝕まれてく。
それが代価ってやつ。特待で入った子はたぶん相当蝕まれているはず。
長生きは出来ないんだろう。
あなたの学年にそれで特待入学した子がいるよ。
これから話しかけて友だちになってみたらどうかな?
・・・あー、話ズレたね。ごめんごめん。
とりあえず、生まれつきの能力を持った人じゃないと本当に入れない学科なの。
星を詠む能力の研究と、力をうまくコントロールするようになるために学ぶところかな。
ここで能力を開花させて成長した子もいるんだよ。それが私。」


彼女は私の説明を聞いてまた唖然としていた。
私はそんな彼女を気にしないフリをして説明を続ける。


「だからあなたがこの学園に入るのは知ってたの。
それでどんな生活を送るのも知ってる。・・でも未来は変えることが出来るんだ。
私は、この学園で二人目となる女の子を守るのが役目なの。
あなたを守りたい。だから生徒会に入ってもらえないかな?」


最後は完全に勧誘。
そこまで説明終わると琥太にぃが立ち上がった。
そろそろ出番なのだろうか。・・・出番!?入学式始まってる!?


「おう。お前が熱心に後輩指導してたからな。
言うの遅くなった。始まってるぞ。」


「琥太にぃのバカ!早く言ってよおお!
月子ちゃんかわいそうじゃんかあああ」


「それはお前が連れ出したからだろうが」



「それ言っちゃだめ!よし月子ちゃん!体育館行くよ!」




琥太にぃを相手してる暇はない!
私はソファーに未だ茫然と座っている彼女の手を引っ張り、
琥太にぃのいるドアの前に行って廊下に出た。


「・・あの先輩、」


体育館に向かう途中で彼女は私に心配そうな目を向けていた。
私はそんな彼女の心配を、吹き飛ばすかのように微笑んだ。


「星詠みのこと、もっと知りたいなら放課後生徒会室においで。
私より詳しい人がいるからね。話してくれるかわかんないけど」


というと彼女は再び黙ってしまった。
詳しい人、とは不知火一樹のことだ。彼は星詠みの能力のおかげで
波乱万丈な人生を送っている。
・・話してくれるかわかんないって言ったけどたぶん彼は
話してくれないと思う。むしろ桜士郎に頼んだ方が早いと思う。


そんなこんな考えているうちに、いつのまにか体育館についていた。
体育館の入り口には新入生がたくさん並んでいて通り道などなかった。
まあ仕方ないか。これは通り道を使うしかあるまい。


「月子ちゃん、こっち」


「え!?あ、はい!」


彼女は戸惑いながらもついてきてくれた。
生徒会が並び、座る場所に行けば一樹もいるだろうし、
生徒の椅子にも座れるだろうし、さっきのこの子の騎士が来てくれるまで
私の隣にいればなにも問題はない。


「おま・・・!!陽!!お前どこにいたんだよ!!」


生徒会の席に行くと開口一番一樹に怒られた。


「うるさい!女の子守ってたの!
・・桜士郎に聞いてないの?」


「・・聞いてた」


「じゃあいいじゃん!バカ!」


「おま・・・!会長さまにバカとはなんだバカ!」


「あ、あの二人とも・・・」


一樹と私の口論が入学式から始まった。
新入生は物珍しいだろうが在校生からしたら日常茶飯事。
先生方からしても日常茶飯事。
そのあいだの月子ちゃんを見るのは初めてだろうが。


「一樹のばか!お父さんのばか!」


「な!!!お父さんに向かってバカはないだろう!!」


もうこの口論はどこにつながるのかわからない。
言い合ってる本人たちも、もうわけがわかってない。
月子ちゃんは間に入って仲裁をしている。


「お?お前見ない顔だな。新入生か」


「え?あ、はい!」


「一樹バカだろ!!だから女の子守ってたって言ったじゃん!」


「お前はバカバカうるせえんだよ!心配して悪いのか!」


「悪くないわ!嬉しいよ!!でも怒鳴らなくてもいいじゃん!!」


「そ・・!それはお前が・・・!!」


「・・先輩方、そこに正座。」


私と一樹の口論を間で聞いていた月子ちゃんはついに立ち上がった。
それに驚いた一樹。いや私も驚いた。静かなマドンナちゃんだと
思っていたから声音からとても恐ろしいものを感じ取ったのは
私たち二人だけじゃないはず。


「月子!!」「月子!お前なにしてんだよ!」


正座をして月子ちゃんの説教をうけていた私たちの後ろから
さっきの二人の騎士が顔を出した。






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