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お正月

翼の場合

「あけましておめでとう!なのだー!」

私の部屋に突然入ってきた翼くんは
新年最初の挨拶と共に満面の笑を見せてくれた。


「あけましておめでとう翼くん。
来るの早いねー。集合場所は食堂じゃなかった?」

私はお茶を飲みながら翼くんに聞くと
彼は頷いて「迎えに来たのだ」と言ってくれた。
おいおい待てや。
となりの月子ちゃんの迎えに行った方が良いだろう
私は女のかけらもないやつだぜ?なあなあ
とは一言も言えず。
私は苦笑してお礼を言った。

「じゃあ食堂にいこっか」

「うぬ!」

元気のいい相づちとともに部屋を出た。




颯斗の場合

翼くんと共に寮をあとにし、
食堂に向かっていると中庭で四季くんを見掛けた。
…この子アメリカに帰るんじゃ…なかった?…か?
と疑問に思ったが放置も危うい季節なので翼くんに
四季くんをおんぶしてもらった。

「…ぬ?」

翼くんは四季くんをおぶってくれたが
上手く出来ないらしく頭の上にはてなが
いくつも浮かんでいた。

と、試行錯誤を繰り返していると
後ろで足音がしたから振り向くとそこには
桃色頭の可愛い綺麗な青空颯斗くんがこちらを見ていた。


「あ、おはよ!颯斗くん!」

「おはようございます…神楽坂くんをおぶって
翼くんはどうしたんですか?」

新年の挨拶しそこねたぁっ!
私は颯斗くんの疑問に答える。

「四季くん寝てるんだけど、なんか
放置も危ういかなと思って!
起こすのも悪いかなって思って!」

「うぬぬー。起きてくれないのだー。」

翼くんは弱音を吐いた。
私は四季くんを起こすことにした。

「仕方ないよね。四季くん起きてー!」

「と言わずとも、神楽坂くんは起きているようですよ」

颯斗くんは楽しそうに笑いながら教えてくれた。
私はほんと?!と感嘆の声をあげ、神楽坂くんをみた。
目がうっすらあいている。

「…なんで…ぬにおんぶされてるの…?」

「四季くんおはよ!」

「…あんたか…」

四季君はいつもねむそう。
颯斗くんもおはようございますと丁寧に
挨拶していた。

「糸目ー!重いのだー!!」

「…わっ」

翼くんは急に両腕をばんざーいと上げて
四季君を落としてしまった。…いや、落とした。
そして颯斗くんもまだいるのにぐんぐんと
先に行ってしまう。


「糸目をおんぶしてたらお腹空いたのだ!
俺先行くー!!」

と残して。
四季君は立ち上がり、そんな翼くんを見て
立ち尽くしている。…いや、寝ていた。


「四季君ー!寝ないでー!」

私は寝てしまった四季くんをおぶろうと、
背中に乗せて歩こうとしていた。が、全く動かない。


「うぐぐぐ…っ」

その始終を見ていた颯斗くんは…
ぶふっと噴き出していた
が、
背中から四季くんの重みが消えたかと思うと

「…仕方ないですね。神楽坂くん、起きてください!」


私に代わり、腕を引っ張っていた。
颯斗くんはなんて優しいんだー!
私はホクホクと微笑んでしまった。

「…颯斗くん颯斗くん」

ちなみに私は颯斗くんの紳士さが好きでたまらない。
大好きなのです。
と、考えていると顔が火照って仕方ない。
でもこの状況だもの。お礼は忘れるべからず。

「はい、どうかしましたか?陽さん」

優しい微笑みを向けて聞いていた颯斗くん。
私も自然と笑顔になる。

「えっと…ありがとう…っ!」

彼が好きだからだろうか。
「ありがとう」の一言も恥ずかしくて仕方がない。

「…っ … いえいえ!」

再びにこっと微笑む。
颯斗くんといるときのこのゆったり流れる時間が大好きだ。

颯斗くんとのんびり食堂に向かった。

「あけましておめでとうございます陽さん」

「うん。おめでとう颯斗くん。
今年もよろしくお願いします!」

「こちらこそ。よろしくおねがいしますね。」


お互い顔を見合わせ、二人で微笑む。
颯斗くんとの新年の顔合わせは、
なんて幸せなのだろう。
私は嬉しさを堪えきれなかった。

不知火一樹の場合


「遅いじゃねーか!颯斗!陽!!」

「ぱぱ、ウルサイヨ」

「月子おおおおお陽があああああ!!!」

「か、一樹会長…!」


私と一樹くんはある意味で親子です。
幼なじみだからっていうのもありました。
でも月子ちゃんが一樹くんの恋人になってから
私は一樹くんをぱぱと呼んでます。
月子ちゃんは月子ちゃん。

「なんでそんなに泣くんだよー」

私は配布されてた甘酒を颯斗くんと月子ちゃん、
それからぱぱに配りながら聞いた。
いまはな泣きやんでいるがさっきはすごかった。

「久しぶりに会ったと思ったら
ぱぱ、ウルサイヨだぞ?!悲しくもなるだろ!!」

ぱぱ絶叫。
月子ちゃんはおろおろしている。

「一樹会長、陽さんも嬉しいんですよ?
照れ隠しですよきっと。だから静かにしてください。
翼くんも発明品でこの場を壊さぬうちに、
片付けてください、ね?」

颯斗くんは翼くんを注意していたのか。
静かだったからどこにいたのかわからなかった。
翼くんの首根っこを掴んで黒い頬笑みを浮かべている。
怖いよね颯斗くん。私は好きだけどさ!

「…なんだってこんな怖いやつが好きなんだよ」

「不知火センパイ、なにか仰いました?」

翼くんへの説教を見ていた一樹くんは
颯斗くんを怖い人扱いしたから
私はとびきり微笑んだ。
一樹くんは首を横に振っている。

「それにしても腹減ったなー!
飯まだかー!」

「ほんとなのだー!お腹空いたー!」

翼くんも一樹くんもまるで大きな子どもだ。
でもこんな二人がいるからこそ、颯斗くんが
陰ながら支えてて、月子ちゃんがお母さんな立場で
見守れるからいまの星月学園生徒会があるんだね。
私はそう考えたらここに入学してよかったという思いが
心の底から湧き揚がった。

「ねえねえ月子ちゃん、一樹くん」

「なあに?陽ちゃん」「どしたー?陽ー」

二人はまるで似ている。
さすが。
私はそんな似てる二人に笑顔を向ける。

「今年もよろしくお願いします!」

そういえば新年の挨拶を二人にしてなかった。


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