小説 | ナノ

 06



一樹のばかみたいなアホみたいな俺様宣言を交えた、
生徒会長の言葉も済み、入学式も無事に終わった今
私は生徒会室の和室スペースでお茶を点てて飲んでいた。

誉ちゃんが教えてくれたのだけど素人でも
上手く出来るものなのだな!


「うんうん。おいしいおいしい。」


こくこくとひとりで何杯も点てて飲んでいると
不意に生徒会室の扉がノックされた。

月子ちゃんかな?


「空いてるよーどぞー」


私は扉に背を向けたまま
そう返事をした。
ワンテンポ遅れて入ってきた子は


「生徒会長さんに呼ばれてきたのですが・・」


と、なんとも綺麗で透明感のある声の持ち主だった。
背中を向けてるから顔を見てない。
待って待って。この抹茶をもう少し堪能してから・・


「あの、あなたは・・」


と扉の付近にまだいたのか、
声の持ち主は私の存在を不思議に思っているらしく
扉のところで警戒心びんびんで私に尋ねた。
ここまで警戒心びんびんだと逆にめんどくさいんだよね。
いいや。彼をここに呼ぼう。
そこで初めて振り返り、彼を見た。


「ごめんね。こっちまで来てもらえるかな」


私は彼に、そう微笑んで手招きした。
彼は首を横に振る。
だがしかし、私がそれを許さなかった。
手招きをするが、来ないということは予測していたので
私が彼の手を引っ張り、隣に座らせたのだ。


「はい、到着。改めてこんにちわ」


「え、あ、はい。こんにちは・・」


彼は戸惑っている。
笑顔なのに結構違和感があるし。


「お茶、飲む?いま点てるよ」


「いえいえ!そんな大丈夫ですよ!」


「あなた名前は?」


私は彼の遠慮の言葉に耳を貸さず、
名前を聞いた。


「あ、名前を聞くときは自分からだよね。ごめんね
私の名前は温香陽。星詠み科の二年生。
一樹と同じ科で同じ学年。よろしくね。
それで、あなたは?」

またいつもの癖。名乗る前に名乗らせようとしてた。
まあ彼の名前もたぶんあってたら把握してる。
この綺麗な桃色の髪色、長身、穏やかな雰囲気。
間違いでなければ彼は”青空颯斗”くん。


「僕は、神話科一年、青空颯斗といいます。」


「やっぱり!あ、お茶どうぞ」


私は彼の自己紹介を聞いたとき嬉しくなった。
だって本当に名前も一言一句間違わずに予言出来たから。


「よろしくねー颯斗くんー!仲良くしてねー!!」


と言うと彼は突然冷めた目をした。
お茶も飲んでくれてない。


「仲良くする必要は、ありません」


そしてこの否定形。
どういうことじゃい。


「・・生徒会に入る気はないんだね」


私は一樹と違って無理難題を言わないし、強要しないつもり。
でもあなたのその目は冷たいけど奥は違う。
すごく期待してるよ。その目で言われてもなぁー。


「えぇ。あなたと仲良くする気もありません」


この子はとても不器用な子なんだな。
私は心の中でそう判断した。
だって泣きそうな表情で、目は冷めたままだけど
悲しそうに微笑んでいるんだもの。
優しいんだけど不器用。

私はそう思うといてもたってもいられなくなって
お茶が入っている茶碗を端に退けた。
そして彼に一歩近づく。また一歩。


「な、なんですか・・?」


その都度、彼は戸惑った顔で私に疑問をぶつけてくる。
そうそう。そのまま。拒絶はしないでね。


「颯斗くん、あなたの髪って綺麗な色をしてるね」


私は当たり障りのない言葉を言いながら
彼にまた一歩近づいた。
彼はわけがわからないようで顔には??が浮かんでいる。


「いまはわからなくてもいいからそのままね」


そして彼に抱きついた。
この子はこうやって抱き締められたことがないんだろう。
私と同じ・・かな?いやこの子のほうがつらかったかもしれない。
でも、辛さは比べるものじゃないから、いまは
私が包んであげる。


「な!!ちょっと!なんですk」


「颯斗くんはさー。
こうやって抱き締められたことある?」


案の定こいつなんなんだ!とでもいうように
颯斗くんはびっくりして声を上げていた。
けど、私の次の言葉に驚きを隠せずにいるようだ。

「・・・え?」








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