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意味のない花占い

「・・る、来ない、来る・・・」


意味もなく、夢の中の私は花びらを切りとる。
来る人なんていないのに花占いをする。


「来ない・・、来る・・!」


そして”来る”で終わり喜ぶ。
本当に単純。意味なんてないのに。
でもそのうち出来る。そう思ってたそのうち。

夢の中の私は12歳。
この頃は近い未来にすごい出来事が待ってるなんて思いもしなかっただろう。





私は幼いころ、誰かとお別れをした。
そしてその子が見つけたとっておきの場所を、守り通すと約束をしていた。
でもそれ以外覚えていない。名前も、声も。
ただ約束をしたことと、そのときの笑顔だけを覚えてる。
使命感っていうやつだろうか。そんなの意味ないのに。

当時の私はそう考えていた。



「・・誰?」


そのとき”私”は後ろを振り返った。
歩く足音が聞こえる。

ここは草原の一角。物音がするはずない。
そして誰もこの場所を知らない。だから足音なんて聞こえるはずない。
車も通らない人気のないところだから。


「陽・・?」


ぼそっと私を呼んだ声は少し幼い彼。
まさか彼が私を知ってるなんて思ってなかった。
当然私は、

「お兄ちゃんは・・だれ?」

と聞いていた。
これが彼との再会だった。


「・・俺は、 不知火一樹だよ。」


「一樹くん、ね!覚えた!私は温香陽!
どうしてここにいるの?
私が来てから、いままで誰も来たことないの!」

”私”は微笑む。
彼も一間おいてから微笑んだ。


「俺はいまここを見つけたんだ。お前の居場所だったのか!
知らなかったわ」


そう言って綺麗に咲いている花たちの隣の緑の草原に座った。
彼の様子を見た私は花を摘みながら首を横に振った。


「ううん。私の居場所じゃないよ。
ここの持ち主・・というか、ここを最初に見つけた人の代わりに来てるの。
ずっと、ずーっと待ってるんだ。私が6歳のころからだから・・・もう6年経ってる!」


こうして、花占いをしながら待ってるの。と言って再び花びらを切り取る。
私はこの頃、すごく純粋だった。


「・・待ってる奴は戻ってきたのか・・?」


彼は尋ねる。”私”は横に振る。そして苦笑。
12歳には似合わない哀愁漂う表情だ。

これは本当に夢なのかしら。
現実的すぎて鳥肌が立つ。


「来てないよ。戻ってきてない。
私ね、実は忘れちゃったの。顔は覚えてて、約束も覚えてるのに、
名前を忘れちゃったの。その子は私を陽って呼んでて、
私はその子をお兄ちゃんって呼んでた。・・これくらいしか覚えてないの」


肩を落としていた。目の前にいるよ。
あなたが忘れた人は目の前にいるんだよ。
私の目の前にいて、隣にいて、言葉を交わしてるよ!と、
落ち込む”私”にとても言いたかった。
彼女の目の前にいる彼は目を伏せた。


「・・そっか。」



意味のない花占い










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