暴走するジェミニ [ 4 ]

「ルーシィは……嫌じゃなかったのか?あれはノーカウントだって怒ってたじゃねぇか。」


あの事件の後、ルーシィは皆にひやかされ感想を促された時に、真っ赤になりながら大声で捲くし立てていた。
双児宮の星霊は、その時の心情とその後から今日の今までずっと考えていたルーシィの気持ちを言葉にする。


「あれは、恥ずかしくて仕方なくて………でも、本当は自分でも、よくわからない。」
「…ふーん。」


ナツは興味がなくなったのかルーシィから目をはずし、再び湖に視線を戻して竿を握りなおす。


「(あれ?もっと慌てるかと思ったのにー。)ナツは、嫌だった?」
「…………わかんねぇ。」

「…そう。(…もっと赤くになったりするかと期待したのにコイツ…普通だなぁ…)」
「でも、思い出したりするし。もう一回したいとか思うぞ。」

「(コイツは色恋沙汰に興味ないのか…ナ)えぇぇ!!!??」
「オレもルーシィが普通に接してくるからオレだけかと思ってた。」

「……!!!」
「ルーシィは…もう一回してもいいって、思うか?」

「…っ!!??」


ナツは視線を湖に向けたままもう一度竿を握りなおす。よく見ると手が微かに震えている。
双児宮の星霊はルーシィの思考を読み取り、行動パターンを合わせていたために、ルーシィのようにナツの言葉に戸惑い心拍数が上がっていた。

そして、それとは別に湧き上がる双児宮の星霊自身の感情。


(ナツもルーシィと一緒だったんだ)

(どうしよう、このまま、まだルーシィを演じたほうがいいかな)

(いや、ここで種明かしして脅かしたほうがおもしろい?)

(でもルーシィのためにもうちょっと様子を窺うべきかも…?)

(でもコイツあんまりおもしろくないよ、グレイの方がおもしろかった)

(どうしよう どうしよう)


ナツは、慌てたまま答えを返さないルーシィに対し、答えを促すようにこちらに向き直る。
真剣な眼差しでもう一度、今度はゆっくりと問う。


「ルーシィは、もう一回、俺と、してもいいって、思うか?」
「わ、わわわわからない!どっ…どどどういう意味で聞いてんの!?」

「どういうって……ルーシィがいいならもう一回って思ってる…だけだけど。」
「ぇ?………え!??」

「ルーシィ………嫌か?」
「…ぃ…や!………じゃ…な…い?…気が…するけ…ど……」

「え!???本当に!!!?」
「…え!?……や、ややっぱり!…わ、わからないよ!!……って、っちょっと!?」


ナツは、ルーシィの返事が意外だったのか、身を乗り出した。
そして慌てて竿を横に放り捨て、ルーシィの肩に両手を乗せる。


「ルーシィ、…き、キスしてもいい…?」
「…え?…え!?」

「ルーシィ…一回だけ……もう一回だけだから。一回だけ。」
「………え、う、……う……ん。」



「っっ!!!!!!…………本当かっ!??…本当だなっ!!??ジェミニ!」



「…………………………は?」



「…………………あ。……いや、違う!本当だな!?ルーシィ!!」
「……いや……………ちょっと待って。」

「よし!!!!………用事できたから行くわ!じゃあな!!」
「ぇぇぇええ!???ちょっと待て!!!」

「…うわっ!!離せよジェ……ルーシィ!!!急いでんだ!!」


さっきまでの熱心に尋ねる姿はどこに行ったのか、急に立ち上がりどこかへ行こうとするナツの腕を掴み、必死に止める双児宮の星霊。
聞き捨てなら無い単語を聞いた気がする。
いや、しかしあり得ない。
姿も声も思考も行動も匂いでさえも完璧にルーシィであったはずだ。
それに相手がナツということもあり、気をつけていたのだ。


「どこに行くのよ!??………き、き、キスは、しないの!??」
「…だからそれをしに…!!……じゃなかった、それはまた今度!!」

「はい!?……誰にそれをしにいくのよ!!!私としたいんじゃなかったの!??」
「そ、そうだけど!……ここはやっぱりルーシィじゃないと……」

「わ、私がルーシィでしょ!??何言ってんの!???」

「…お、おう!そうだな!!…本物だ!完璧に本物だ!さすがだ!ありがとな!!」

「何のお礼!????てか、だからちょっと待ちなさい!!!」


妙な焦燥感と不安が渦巻き必死にナツを行かせまいとする双児宮の星霊と、一刻も早くと、ルーシィを振り切ろうとするナツ。
お互いの腕を掴み合い、お互い自分の体裁を守ろうとしながら徐々に本心が見え隠れする。

そんな二人の腕をさらに力強く掴む腕が、突如現れた。



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