今更?
長かった。
長かった、が、もう終わる。
ようやくだ。ようやく終わらせることが出来る。
テメェに殺られるなんざ、世界を滅ぼした大悪党に相応しい最期じゃあねェか。
「銀時さん」
懐かしい声がする。役に立たねェ目だな。見えやしねェ。
「お疲れさま」
でも誰だかわかる。この温もりは。
「−−−」
…もう声も出ねェや。
「一人で辛かったですね。頑張りましたね」
俺がよくそうしたのをなぞってか、彼女の手が俺の頭を撫でる。そうだこの手は、こんな風に温かくて柔らかかった。
「健康優良児だって言ったくせに、最初に死んじゃってごめんなさい」
誰より俺の近くにいたからだろ。
ごめんな。ごめん。
「いいの」
柔らかい温もりに包まれる。
「あなたと出会わなくて生き残る人生より、ずっとずーっと幸せな人生でした」
「今度はもっと強く強く生まれて来ますから」
「また私のこと、選んでくださいね」
今度、か。
そうさなァ。やり直した過去だか未来だかの中に俺はいねェけど、生まれ変わりってのがあんだとしたらそっちに賭けてみるのも悪かねェかもな。
「今の私はほら、時間が止まってますから。あなたのこと、忘れませんよ。私だけはちゃんと覚えてますからね」
覚えていなくていい。
俺は忘れねェから、それでいい。
それだけで。
「おやすみなさい。ゆっくり休んで」
ようやく訪れた終焉はひどく安らかで温かかった。
***
というちょっと切ない風味。
厭魅銀さんは5年も一人で頑張ってたのに最期は誰にも看取られなくてちょっと切なかったなぁ、と思って。ヒロインちゃんは最初に感染が爆発的に拡がった時点でやられてしまいました。二人きりのひっそりした最期はちょっと幻想的で儚いのです。
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