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甘やかして

同棲している彼女は帰って来ておれの顔を見た途端何故か泣き出した。彼女の泣き顔は苦手だ。どうしたらいいかわからなくなるから。

「どうしたの?」

「…っ…わっ、かんな…、でもっ、なんかっ、すっごい、つかれ、っ、」

「つかれ?…疲れた?」

「ぅ、ん"…。ん、」

とりあえず、アレだ。涙の理由がわかりゃあ対処の仕様があるってもんだ。おれは泣きじゃくる彼女を抱き締めて背中をさすってやった。ゆっくりゆっくり、彼女が落ち着くように。時々声をかけてやりながら。

「ここんとこクソ頑張ってるもんな。疲れちゃうよな」

「っ、でも、全然、出来な、っ、の」

「うん」

「ひ、ひとりでっ、空回って…っひぃっく、…ちゃんと、やりたい、の、にっ、わた、わたし…っ」

「うん…」

「こんなっ、ことで、泣いてる自分、すっごいやだのに、っ、く…、」

「いいよ。ため込んじゃうよりずっといい」

「ごめっ…、サンジも、つ、かれて、のに、」

「平気だよ」

「ごめ…っ、う、ぅ、」

それからしばらく泣き続けた彼女は、涙も涸れたのか泣き止んだ。目は真っ赤に充血しているし顔は真っ赤だし、泣き疲れたろうからこのまま寝かせてやりたい気もするが翌朝のことを考えるとそれはマズいだろう。おれは彼女にティッシュ箱を渡してその場を離れた。濡れタオルと温めたタオルを用意して、交互に目元に当てるように言いつけた。彼女は大人しく従った。

「擦っちゃダメだからね。腫れるよ」

「ん…」

「あと飯作るからちゃんと食って。食欲ないならスープとかにするけど」

「…じゃあ…、あんま、重くないのがいい…」

「重くないの…。…リゾットとかは?」

「ん…食べる。食べます」

「風呂は?飯の後で平気ならすぐ作っちゃうから後回しになるけど」

「……サンジ」

ぎゅうぅ。彼女がおれの腰に抱き付いてきた。なんだなんだ。クソ可愛い。

「サンジ、大好き…」

「おれも。好きだよ。頑張ってる君も、疲れちゃってる君も」

「明日から…、ちゃんとまた頑張るね」

「無理はしないでくれよ」

「サンジも疲れたら言ってね。私あんま…てゆうか出来ないことのが多いけど、サンジの為なら頑張れるし」

「大丈夫」

そばにいてくれる。それだけでいいんだよ。

category:SS

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