結果から言えば、わたしは負けた。冷静かつ理論的に考えれば、これは当然とも言えた。そもそもこの世界に来て戦いから逃げ続けていたわたしが、戦いの輪廻に捕らわれた戦士を相手に何ができるというのだろう。結局、実戦経験のないわたしの放った魔法では太刀打ちできるはずもなく、彼の重たい斬撃を避け切れなくなってきたわたしは、ついに膝をついた。
「どうやら貴様のあがきも、ここまでのようだな」
「……、」
息をついて静かに目を閉じたわたしに、大剣が振り下ろされる。これで終わり、か……。脳裏によぎったあの明るい笑顔が、妙に恋しかった。
「させるかよ!」
いつの間にか聞き慣れてしまっていた声に反射的に顔を上げた。
「……ジタン!」
わたしをかばって大剣をダガーで受けたのは、思い描いていた金髪の彼。わたしの声に彼は驚いたような顔で振り返った。
「チェリカ……!やっと名前、呼んでくれたな」
「あ……」
彼は嬉しそうに微笑んで、それからガーランドに向き直った。何か言おうとしていたはずのわたしは、はっとして口をつぐんだ。
「それじゃ、いっちょやりますか!」「その女はカオスの駒……。お前は敵を助けるのか?」「誰かを助けるのに理由がいるかい?それに、チェリカには消えて欲しくないからな」
わたしは驚いた。彼がそんな風に思っていたなんて。ただ数度、言葉を交わしただけで、わたしは彼らの仲間になったつもりはないし、それを彼も了承していたはずだ。仲間ならまだしも敵であるわたしを助けるなんて、どうかしている。
わたしには助けらる理由なんてない。そう思っていたからこそ、戦いの前にヒーローの登場を幻視したのだ。それが今、現実になっている。信じられる訳が、なかった。
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