初めて彼に会ったのは、わたしがカオスの召喚した彼らに嫌気が差した頃。コスモスが司るような明るい森までテレポートしてきたわたしは、本の続きを読んでいた。彼は戦う意志のないわたしを、コスモスの仲間に引き入れようと誘った。わたしは軽くあしらったつもりだったのに、彼はまた会えるよな、なんて言っていた。
次に会ったときは、ちょうどわたしが本を読み終わった時だった。気まぐれにわたしは少しだけ彼の話に付き合った。わたしが女の子ならそちらにもいるでしょう、と言うと、彼はティナには頼もしいナイトがいるからな、と言った。その時の彼の表情は、予想していたよりも優しくて、少し驚いたのを覚えている。
今思えば、その時からわたしは本の続き以上に彼に興味を持っていたのかもしれない。仲間の話をする彼はいつも、驚くくらい優しい、温かい表情を浮かべていたのだ。
この世界以上にわたしを引き込む本の中の世界。それ以上の存在なんて、こんなつまらない世界にいるはずない。ずっとそう思っていたのに。
けれど、だからこそわたしはわざわざコスモスの地で本を読んでいたし、あれから何度も彼とたわいない言葉を交わしたのだ。
広げてから1ページも進んでいない本を脇に置いてわたしは立ち上がった。手をかざすと、わたしの武器が現れる。
「この世界に残した未練、思い出したみたい」
ガーランドを相手に勝てる気はしなかったが、それでも。ここであっさり終わる訳にはいかないと思った。そして、そんな考えに至った自分に今更ながらに苦笑。
「ほう?……戦う気になったか」
「勘違いしないで。わたしはここで消えたくないだけ。カオスに手を貸す気はないわ」
「……面白い。ならば受けて立とう」
対峙してみて初めて気づく、相手の大きさ。文字通り、歴戦の猛者であることが、容易に伺える。本の世界なら、王子様だとか勇者様が助けにきてくれるのにな……。つい現実逃避を始める自分に再び苦笑しつつも、攻撃呪文を詠唱する。先手必勝。手加減無しの本気を最速で放つ。ガーランドの姿は爆煙に消えた。
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