「本当に戦う気はないのか?」
書庫でいつものように本を読んでいたわたしの前に現れたのはガーランドだった。どうやらカオスに召喚されたのにも関わらず、本を読むか、気まぐれに外を出歩くだけのわたしにしびれを切らしたらしかった。わたしはぱたんと本を閉じた。
「カオスもこの世界も、この本以上には面白くないもの。それで?わたしを消しに来たって訳?」
実は、そろそろ来るだろうとは思っていた。神を含め、ここの連中はわたしにしてみれば誰も彼も血気盛んだ。戦うことが存在意義となるこの世界に、わたしのような存在は不必要だ。
「分かっておるのならば、話は早い」
ガーランドが大剣を取り出すと同時に、辺りの景色が変わった。ガーランドの居城、カオス神殿。わたしは肩をすくめた。
「わざわざ移動しなくても、抵抗なんかしないわよ。ただ……」
表情の見えない鎧に持っていた本を掲げてみせる。
「この続きさえ読ませてくれれば未練はないわ」
ガーランドの手から大剣が消えた。どうやら戦意を失ったらしい。
「生に執着せぬか。面白い」
「こんな世界、どうだっていいわ」
そうは言ったけれど、わたしの脳裏にはなぜか、明るい金髪の少年の笑顔が浮かんでいた。
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