「さわやかな朝ですね」
そう言って、トキヤくんは目を細めて笑った。
その笑顔はまさにさわやかだったが、わたしにとっての朝は、さわやかとは程遠いものだ。
眠い。脳内を占めるその言葉を追い出すようにわたしは笑顔を作る。
「そうだね」
わたしは襲い来る眠気にまばたきで抵抗しながら空を見上げた。今日もいい天気だ。早起きが苦にならないトキヤくんにとっては確かに「さわやかな朝」だろう。
「少し、歩きましょうか」
どこか苦笑を含んだ柔らかい声に振り返ると、トキヤくんは至極当然といった様子でわたしの手を取り歩き出した。
じんわりと温かい大きな手を握り返すと、なんともいえない幸福感でいっぱいになる。
「トキヤくん」
名前を呼べば、なんですか、と振り返ってくれる。わたしにだけ見せてくれる、やわらかい笑顔。
「えへへ」
なんだかくすぐったくなって、笑ってごまかした。
やっぱりまだ、少しだけ眠いけれど、
「今日は、いい朝だね」
そう言って、一人頷くわたしに、トキヤくんは小さく笑った。
朝
君が、隣にいる。
笑ってくれる。
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