「チェリカ!大丈夫か?」
駆け寄ってきた彼に、わたしはなんとか立ち上がった。いつの間にかガーランドはいなくなっていて、彼が勝ったのだと分かった。
「どうして……わたしなんか、助けたの」
真っ直ぐに自分を見つめる彼の瞳が眩しくて、わたしは目線をそらして遠くを見た。
「言ったでしょう?わたしはこの世界にはいらない存在なの。同情なんていらないわ」
「同情なんかじゃない!」
珍しく声を荒げた彼につい振り返ると、彼の腕がわたしを捕らえた。急なことに思考が追いつかない。驚く程近くで、彼のわたしの名を呼ぶ声がして初めて、自分が抱きしめられたのだと気づいた。
「泣いてただろ……」
「え?泣いてなんか……」
「二度目に会ったとき、チェリカ、泣いてた」
「……あ」
あのとき、わたしはちょうど本を読み終わったところだった。主人公の、ヒロインを想う気持ちについ涙が零れたのを思い出して、頬が熱くなる。
「あの話さ、オレも知ってて、だから、それ読んで泣いてるチェリカを見て思ったんだ。チェリカは本当は優しいんだって。本ばかり読んでたのは、本の世界に憧れてたから。本当は平和な世界で、幸せな恋愛がしたかった……」
「そんなこと……!」
「強がらなくていい。そう言ってくれたのはチェリカだろ?」
「けど、あれは、そのとき読んでた本の受け売りだって言ったでしょう?」
「ああ、でもあの時オレは、本当に救われたんだ。チェリカは、気づいてないかもしれないけど、チェリカが選んでくれた言葉は、オレを勇気づけてくれたんだ。だから、今度はオレの番だ。チェリカ、強がらなくていい。チェリカは、オレが守るから」
「どうして、そこまで……」
「チェリカを愛してるから……かな」
彼は少しおどけて笑ったけれど、その言葉はわたしの中にすっと染み込んだ。
わたしはずっと、この言葉を待っていたのかもしれなかった。
自分のことなのに、言われて初めて気づくなんて。
そっと頭を撫でられたかと思うと、急に視界が歪んだ。
「ジタン……ありがとう」
愛してる、その響きに憧れた
憧れが現実になったとき、やっとわたしは全てを受け入れられた。
企画提出:
恋に溺れた人魚姫
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