その決意は“ ” 1/1
おそ松兄さんは優しいね……
だから僕はその優しさに甘えちゃうんだ。
でもね、決めたんだ。
『兄さん、ぎゅってしてもらっていいっすか?』
「…………」
兄さんは1度僕を見て、目を背けた。
今、家に居るのは僕とおそ松兄さんだけで二階のソファーで競馬新聞を見ていた兄さんの前に僕は立っていた。
「十四ま『おそ松兄さん!ほんの少しだけ。ほんの少しだけで……いいから……』
兄さんが言いたい事は分かってた。
でも、今は聞きたくなかったんだ。
泣きそうなのを我慢して再度、兄さんに
『……お願い、兄さん。』
おそ松兄さんは一息ついて、いつものように
「十四松は甘えただなぁ。ほらっ、兄ちゃんが抱っこしてやるよ!」
僕はおそ松兄さんの胸に飛び込んだ。
兄さんの胸に耳を当て、おそ松兄さんの心音に安心した。
そして、ゆっくり顔を上げ、おそ松兄さんを見る。
『…………』
「どうした?」
にっと笑ってるけど、どこか苦しそうな顔。
……やっぱり僕がさせてるんだよね。
僕が自分の気持ちを隠しきれなかったから……
気持ちを伝えちゃったから……
おそ松兄さんを苦しめてしまったんだね。
『僕ね、おそ松兄さんが好き、大好き。でもね、僕のせいで兄さんがいつもの“僕達”の兄さんでいられないなら……』
僕はパッとおそ松兄さんから離れて、前にしゃがみ兄さんの手を握る。
『おそ松兄さん、好きになってごめんね。』
「十四松……」
そんな悲しい顔しないで……
決めた気持ちが揺らいでしまう。
『僕、大丈夫だよ?大丈夫だから、いつもの“僕達”の兄さんに戻っていいよ!普通の兄弟に戻ろ?』
僕は“僕達”と強調する。
僕の告白で優しいおそ松兄さんは断れずに兄弟愛として僕の愛を受け入れてくれたんだ。
けど、僕はそれ以上の愛が欲しかった。
おそ松兄さんと手を繋ぎたいし、キスもしたい。
それにセックスだって……
でも、おそ松兄さんの愛は情にすぎない。
いつもそんな雰囲気になると誤魔化されていた。
そしていつも苦しそうな顔をする。
『ほらほら!いつものように笑って!カッコイイおそ松兄さんでいてよ!』
僕は最大の笑顔で言った。
優しくてカッコよくていつも笑ってる兄さんが好きなんだよ。
僕の我が儘な愛で兄さんを苦しめたくない。
だからね……
僕は握っていたおそ松兄さんの手を見つめ、その小指に最初で最後の口付けをする。
『ごめんね、僕の我が儘に付き合わせて。ありがとう、おそ松兄さん。』
僕は立ち上がり、部屋を出た。
おそ松兄さんが僕の名を呼んでくれたけど、今振り返ったら泣いてしまう。
だから聞こえないふりをしたんだ。
『おそ松兄さんの運命の赤い糸は僕には繋がっていなかったんだ。』
そう言い聞かせ、翌日、僕は家を出た。
その決意は“旅立ち”
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