sweet dreams1
「おかえりなさい」
玄関の扉を閉めて、電気をつけると一人暮らしのはずなのに声をかけられた。
「何で此処にいるの…?」
恐怖で表情が強張る。
視線の先には、最も恐ろしい人物が廊下の壁にもたれかかって立っていた。
「なまえに会いたかったからに決まってんじゃん」
変なの―――
なんておあいては嬉しそうに口角を上げて呆然と立ち尽くす私の元へと近寄ってくる。
お決まりの白いパーカーにジーパンを身に付け、相変わらずの無邪気な笑顔でこの家にいるのが当然のといった雰囲気を醸し出している。
だけど、私は彼に家を教えた覚えはなかった。
おあいては以前バイトをしていたカフェで一緒に働いていた。
「なまえ、ゴメン!オーダー間違えちゃった!」
「も〜!何やってんの!」
なんて、初めは楽しかった。
同じ大学生で同じ年齢。
同時期に店に入った事もあり、仲良しだった。
バイトの終わりに2人でご飯食べに行ったりとかして、いつも一緒に笑ってた。
いい友達が出来たなって思ってたけど…
「びっくりしたよ。なまえはなんで急に辞めちゃったの?」
おあいてが顔を近付けて悲しそうに問いかけてくる。
「他にいいバイト見つけたから…」
思わず目を反らす。
じわりと嫌な汗が頭頂部から滴り、心臓の鼓動が細かくなる。
本能から送られる危険信号に従い、離れて1メートルもない玄関の扉に向かうために微かに後退しようと足を動かした。
ところが、その瞬間、彼は笑顔を崩す事なく逃さないと言わんばかりに強い力で私の右腕を掴んだ。
息を飲む間もなく、バンッと大きな音がして身体に衝撃を受ける。
「嘘つき」
無理やり廊下に上がらされ、壁に押し付けられた私に浴びせられる冷たい声。肩を掴む彼の手には骨が悲鳴をあげそうな力が込められていた。
脱げてしまった左足のパンプスが玄関に転がっていた。
「俺の事、避けてたんだろ?」
無表情なおあいての瞳は深い洞穴のような闇が広がっていた。
「…だって…おあいてが…」
「俺が?」
問い詰める様に至近距離で瞳を覗き込んでくる彼。
「…怖い」
私の答えに目を丸くして首を傾げる彼は、かつて知り合った頃を思い出させる。
大きなパッチリとした瞳に笑うと大きくひろがる口元、コロコロと目まぐるしく変わる豊かな表情。その無害で可愛い犬みたいな風貌に騙されただけだった。
「なんで、私の後ろをずっと付いてくるの?」
恐怖で声が震える。
「そんなのなまえの事が好きだからに決まってんじゃん。それに、俺、怖くないよ?ただなまえと一緒にいたいだけなの」
一瞬でも離れたくない位に―――
言葉の最後は私の唇の中に消えた。
唇を貪る様に奪われ、舌を吸われる。
絡み付く彼の唾液に侵かされていく感覚。
抵抗しようとすれば、身体全体をのしかからせて首の後ろに回された右手で動きを封じられる。
酸素を奪われ、ぼんやりとしてきたところで今度はフローリングへと押し倒された。
「嫌!止めて!!」
無理矢理引き裂かれたお気に入りのブラウスはただの布と化し、床に貼り付けられた私の首筋にはおあいての舌が這い回る。
身体を捩って抵抗しようとしても、全く止める気配はない。
気持ち悪さと恐怖で、涙が溢れてきた。
すると、頬にざらついた感触。
「ねぇ、俺はなまえの恋人になりたかっただけなんだよ?」
零れる涙を舐めとった彼は悲しそうに笑う。
その笑顔は、彼の数々の奇妙な行動を脳裏に甦らせた。
毎日送られてくるメール、電話。
バイトでも毎回全く同じシフト。
「やぁっ…!」
ちゅっと私の胸の先端に吸い付く彼の唇は優しい。
まるで飴を舐めるかの様な舌使いに、身体が反応してしまう。
「だから、なまえの事いっぱい知りたくて、なまえの友達とも仲良くなって…」
悲しそうにこぼしながら、ショーツに指を滑り込ませ、秘裂をなぞった。
「あぁっ…!」
中に侵入した指は次第にくちゅくちゅと音を立てながら、私の感じる場所を探る様に動く。
理性を手放さない様に、必死に彼の行動を思い出そうとしていた。
…おあいては違う大学なのに、私の大学によく来ていた。
しまいには、講義を受ける私の隣の席に座っていた。
それだけじゃない。
あの人懐っこさで、知らないところで私の友達とも仲良くなっていたのだ。
段々と恐怖が足音を立てて近づ背後に近づいてくるのが分かった。
気付いた時には、私の世界におあいてが入り込んでいてすでに内側から蝕まれてしまっていた。
「なのに、なんで俺から逃げるの?」
「やだ!それダメ!!」
詰るように段々と指を早く動かす。
ヒクヒクと粘膜が蠢き、飛沫が舞い上がる。
もはや抗う術はない。
「あんなに仲良かったのに…!」
おまけに怒りを滲ませたおあいては指の動きはそのままに胸の突起に歯を立てた。
「やあぁぁっ…!」
全身に電流が駆け巡る。
無理矢理に絶頂を迎えさせらせて、身体の力が抜けていく。
腰を浮かせて、膣内は彼の指を握り締めていた。
「はぁっ…はぁっ…」
息が上がり、酸素を求めて口を大きく開けた瞬間―――
「なまえ」
「!?」
いきなり、彼自身を口に捩じ込まれた。
prev/
next
back