流星群



星に願えば願いが叶うなんて
誰が言ったんだろう。


「ん…あっ…」

月明かりが射し込む部屋――
ベッドで大切な恋人の芽衣と肌を重ねていた。

俺の下で恥ずかしそうに
だけど快感に酔って身体をくねらせる彼女。

「はぁっ…宗弥…」

「…っ、ここがイイの…?」

彼女の奥の肉襞を擦ると
鳴き声が一層甘くなる。
俺の首筋に腕を回して、抱きついてきた。

―――幸せだ。

溢れる満足感に腰が震える。


芽衣と初めて会ったのは、大学のゼミだった。

「宗弥君、一緒に頑張ろうね!」

グループが一緒で、プレゼンの為に共同作業をすることが多かった。
茶色の柔らかな髪の毛をふわふわとカールさせて、白い肌にピンクの唇の可愛らしい女の子。おまけに真面目で優しくて、いつも笑顔の君に心を奪われるのはあっという間だった。

だけど、君には綾仁という彼氏がいて。
俺はどんなに想っても
ただの"友達"―――

悔しかったよ。
アイツより先に出逢っていれば絶対に俺と結ばれたはずなのに…
芽衣が別れればいいのに…
何時も祈ってた。

願いなんてものはただ祈るだけじゃ叶わない。


「はぁっ…!あぁっ!」

入り口まで引き抜いて、一気に貫いてやると俺をきゅうっと締め付ける。
快感に浮かされて、芽衣の瞳からは涙が零れ落ちる。
彼女の頬に触れて涙を拭う。


「宗弥君…綾仁が…」

ある真夜中に電話が鳴った。
受話器越しには愛しい彼女の嗚咽。

「芽衣ちゃん、どうしたの?」

彼女の声に思わず口角が上がる。
心配してるふりをしてたけど、内心は嬉しくて堪らなかった。

だって、全部彼氏と別れさせるための俺の作戦だったんだから。

俺のセフレだった女を綾仁って奴に近づけさせたんだ。

「元気出して!遊びに行こう!」

それからは、誰よりも近くで失恋した彼女を励まして支え続けた。
毎日電話で話を聞いて、外へ連れ出して。
アイツが抜けた穴を俺で埋めようとしたんだ。
傷口に優しく薬を塗り込んであげるようにそっとそっと。
俺が浸みこんでアイツへの想いを手放せる様に。
綾仁って奴との思い出を消毒してかさぶたにして剥がれ落ちる様に。

「俺なら芽衣にそんな思いはさせないよ。
ずっと好きだった」

彼女が立ち直る兆しを見せたある日、芽衣に想いを告げて抱き締める。
彼女は戸惑いながらも俺の背中に腕を回してくれた。

欲しいものがあるなら、自分から手を伸ばさなきゃ。

そのおかげで、こうして芽衣に触れる事ができるんだから…
君の肌も髪も声も心もその全てが俺のもの。
壊さない様に大切に大切に君を扱う。



「はぁっ…芽衣…」

「宗弥…あぁっ!」

そんな事を思い出しながら、彼女の奥を貫いていると腰が浮いて震えてくる。

「っ…」

絡み付く粘膜の圧迫感に耐えきれず、俺は熱を膣内に放った。



「…そろそろ流星群が見れるかな?」

全てが終わって、微睡んでいると
腕の中の芽衣が呟く。

「流星群…?」

「そう、今日の夜中から明け方にかけて沢山の流れ星が見れるの。」

不思議そうに視線を落とすと
彼女は嬉しそうにキラキラとした瞳で俺を見上げる。

「願い事、沢山したいな…」

「何を願うの?」

「宗弥とずっと一緒にいたいって」

あとは、宗弥と沢山遊びに行きちたいとか、ケンカしないようにとか…

なんて真面目に願い事を考えてる
彼女は愚かで可愛くて。
ただただ頬は緩むばかり。

そんなの星じゃなくて俺に願えばいいのに。
その方がよっぽど現実的だよ。
頼まれたって、君の事は離さないんだから…

「ねぇ?宗弥は何をお願いするの?」

すると不意に思考を遮られる。
キラキラと目を輝かせて俺の言葉を待つ大切な彼女。

「俺は…」

言葉が続かなかった。
だって俺の"願い"は叶う訳ないから。

もしも君が真実を知ったとしても、
ずっと隣にいて欲しい…
そんな事は絶対に有り得ない。

あぁ…だけど
もしかしたら―――


星に願えば叶うのかな?



2014.4.30
遥か


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