薬指に誓う永遠(前編)1



そう、ずっとこの日を待ちわびてた。

君との再会を…

ーーーーーーーーーーーー


「にしても、おあいて君がまさかモデルになるなんてびっくり〜!」

「ほんと、すごいよな!!
つか、同窓会来て大丈夫か!?
仕事詰まってんじゃねーの?」

「大丈夫だよ」

俺は笑顔で同級生に答える。
今日は高校の同窓会。
モデルの仕事をしている俺は確かに忙しい。
けれども、仕事よりも大事なものがあるから、此処へ来たんだ。

興味本意で仕事の事を色々聞いてくる同級生達を笑顔でかわしながら、
俺は部屋の対角にいるなまえに視線を送る。

彼女は全く気づいていない。
それどころか、隣にいる同級生の男と話込んでいた。
少し苛立ち、彼女に近づく様に席を移動して再び視線を送る。

すると、彼女は気付いたみたいで俺の方に顔を向けた。
視線が合うと、彼女は焦った様に逸らす。
照れているのかな?

結局、飲み会の間は一言も話す事が出来なかった。


「じゃあな〜!
おあいて、仕事頑張れよ〜!」

「おあいて君、また来てね〜!」

「あぁ、ありがとな!また!」

同級生達と別れの挨拶を交わした俺は、 居酒屋を後にした。
これから起こる出来事への期待に胸を膨らませ、足取りも軽い。


「ねぇ、なまえ」

帰り道、一人で歩く君に声を掛ける。
この道は街灯も人通りも少ない。

「おあいて…君」

君は僕をみて驚いている。

「久しぶり。
さっきは、何で目逸らしたの?
僕の変わり具合にびっくりしちゃった?」

必殺のモデルスマイルを向けるも、何だか彼女の反応はイマイチで…

「うん…本当にびっくりした。
仕事忙しいだろうから来ないと思ってた」

じゃあ、私、帰るからーー

彼女がそう言って、焦った様子で俺の横をすり抜けようとした。

「待ってよ。」

彼女の腕を掴む。
なまえの目は泳ぎ、身体は震えている。

「今日は、君にもう一度会うために来たんだ」

そのまま彼女を抱きよせ、その口許に白い布を当てた。
彼女は驚きで目を見開いたが、薬が効いてきたのだろう
次第に目蓋が重くなり、目を閉じた。



なまえは俺にとって忘れられない存在。
高校3年の時に隣の席になり、地味でクラスでも大人しかった俺にいつも話かけてくれて、次第に仲良くなった。

初めて人を好きになって、勇気を出して想いを告げた。

初めて付き合った女の子であんなに上手くいっていたのに、
ある日突然別れを告げられた。

何でだろう?
別れた後は一切口をきいてくれなかったし、メールも電話も出てくれなかった。
俺は悩んだし、彼女の事が忘れられなかった。

だけど、今はあの頃の俺とは違う!

大学に入った後、お洒落に気を使う様になって、女の子からも沢山告白されるのも朝飯前となり、街を歩いていたらスカウトされた。
そして、今や人気モデルとなったんだ。
有名大学に通うほど頭もいいし、ルックスも何もかも完璧!
そんな俺をどうして放っておける?
俺の事を絶対もう一度好きになってくれるはず。
今度こそ、誰もが羨む理想の恋人になってあげる。



――作戦成功。
俺の家のベッドに横たわるなまえの頬を撫でる。
彼女の寝顔を見ながら、思い出に想いを馳せた。

「おあいて君!おはよ〜!」

「いつもテスト100点なんてすごいね!」

「私も…おあいて君の事、好き」

記憶の中のなまえは、いつも眩しい位の笑顔で、それに俺は恋焦がれていた。

あの頃も可愛いかったけど、少し年月を重ねた現在は、顔付きも大人っぽくなって本当に綺麗になった。

悪い虫がつかないように、俺が守らなきゃ。
なまえは汚れちゃいけないから。

そんな決意を固めてると…


「…ん」

なまえが目を覚ました。


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