水雷エクスタシー

絶対の確定と支配がその先にもたらすのは怠惰でしかない。
悪い遊びほど飽きやすい。だから生温い底無し沼を住処とする。相も変わらず鱗を剥ぎ合っている。

まあ、俺らの関係なんて所詮そんなモンでショ。煙草片手に言い放つと左手でスカーフを緩めてその辺に投げ捨てた。戯曲みたいな演出は要らない。美しい台詞も、要らない。

「ねぇ、陛下。シようよ」

まだ半分は寿命があるだろうセッタを葬って肺に残った煙を吐き出す。身体から何かが失われた気がする。寂しい。

「口寂しい」

陛下が本数減らせってゆーからいけない。律義に守ってる俺にご褒美は?
唇を尖らせる。エドガーが優しく頬を包むのがわかった。自称寂しい口を厚くて熱い唇が満たしていく。食まれてもどかしくて唇を開く、自ら舌を差し出す、甘噛みされるだけで腰が痺れた。頂戴。首に腕を回す。閉じた瞳の奥で暖色の照明がゆらゆら光っていた。
灯り、消して。



ベッドサイドで照明をコントロールした。ヤりたいならこんなに着込むな天の邪鬼。装飾品やらご丁寧にもリボンで合わされたシャツやらを解きながら言えば、本当はシャワー浴びてからにしようと思ってたの。でもどうせもっかい浴びなきゃいけないし風呂でもヤるだろうしってワケで脱がすのも愉しみのひとつと考えて頂きたい、なんて返されたので肌蹴た鎖骨に歯を立てて強く吸う。歯形ともキスマークとも言えるような痕が陶器の肌に咲く。
思わずにやりとした。

焦れったいほどに遠回りして身体を弄る。そうされるのが好きなのだ、この男は。
言葉なんて要らないと思っているのはまさに私たちが似ているからだ。
果敢なき愚か者は嘘でコーティングされている。嘘と広言することすら嘘である。

探り合わずともわかる。私達は同じ沼に住んでいるのだから。


一定値を超えればそれからのセッツァーなんて「壊れた」としか形容の出来ない態である。ねぇもっと、もっとして、早く早く早く、もっとイイトコ連れてってよ。そう言って絡み付く白い脚。乱れて荒ぶ息。恍惚に蕩けた紫。にたりと上がった口角から零れ落ちる嬌声に時折嗚咽が混じり、また私の名、及び役職を柔らかく甘ったるく繰り返す。

「あーもう、君は。泣くのか笑うのか善がるのがどれかにしたら如何だい、まったく器用だね」

泣きそうな顔で笑ってみせるのだ。愛着と哀愁。恍惚と狡猾。純愛と騙し合い。それが如何にもセッツァーらしくて、嗚呼そんなの似合う必要無いのに。ねぇ何を見てるの。問えば笑みが濃くなる。「まだ余裕」とでも言いたげに唇を舐めていった赤い赤い舌に対抗して乱暴に揺さぶった。溺れている、くせに。

「本当…あ、男前な…ぁ、あ…ッ、顔してる…」

そうして瞼に鼻にと落ちて来る口付けを甘受して(何もかも悟ったような顔がいけ好かない)、仕返し、とばかりに後ろ首抱えて丹念に耳を舐る。やだやだと幼子のように逃げるその腰を深々と穿つと、のけ反った白い喉から、ひっ、と掠れた空気が漏れた。急にあどけなくなった表情はしかし直ぐさま快楽の波に墜落して歪む。

「ん、あ、あぁ、や…、」

縋り付く身体。愛おしさに並んで私の中の嗜虐性と独占欲が目を覚ます。
引きずり込んで、このまま、私のものに…

「ね、陛下ァ…」

セッツァーの爪が背中に食い込んで少し痛い。
今日は金色エナメルのネイル。
伸ばしておくのは夜、綺麗な痕を付ける為さ、なんて言われたのを思い出す。冗談じゃない。

溜め息のような声を漏らしてセッツァーは耳元で囁いた。

「俺ン中で死んでくれる?」

ヤバい、イキそう。




【水雷エクスタシー】
(触れ合って火傷、打ち上げられて窒息。)


(2009.09.09)
好きにして。美味しく食べて。


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