一寸先の星


大人って馬鹿なんだなって思った。



あの人はオトナであることが好きなの。
多分、オトナを着て大人で在り続けるのが仕事なんだって思った。

あの人はアタシをコドモ扱いする。
実際アタシは子供だからいいの。
大人だとか子供だとか、そんな境界線はハッキリ言ってどうでもいいのよ。
だけど聞くの。

「じゃあ傷男は、オトナってどういうモノだと思うワケ?」

そうしたら、貴方、困るでしょう?
目を細めて小さく溜め息を吐くでしょう。
その倦怠な姿が好きなの。

「お酒が飲めたら?煙草が吸えたら?知識が増えたら?キスをしたら?それとも、誰かとベッドを共にしたらですか?」
「…お前、そゆコト何処で覚えてくんの」

面倒そうに髪の毛を弄るその仕草も、嫌いじゃないの。
誤魔化そうとしてるなら、もう何にも言わなきゃいいのに、だから、貴方はオトナになれないの。

「さぁ?どっかの誰かさん達からよ」
「あのなぁ…」

歳を重ねたら大人、なんて、ツマラナイことは言わないでよ。
そうなら子供は大人に敵わないじゃない。
ほら、でも、貴方、アタシに敵わないでしょう?
困ったフリをしてくれるじゃない。

「何が気に入らないのよ」

そんなあやすみたいに笑わないでよ。
判ったフリをする大人は嫌いなの。

「…傷男が大人ってコト」
「そりゃあ、ありがとね」
「別に褒めてないわよ」

お酒を飲まなくても煙草を吸わなくても色々なことを知っていなくても誰ともキスをしなくても誰かと同じベッドで寝ないで一人で過ごしてたって、貴方が大人だって知ってるわ。
だけど、だけどね。

「もうすぐ、みんな帰ってくるね」

ねぇ貴方、知らないでしょう。
ただいまって言うあの人の声で、貴方すぐに目をキラキラさせて息を止めるのよ。
ショーウィンドウ覗く子供みたいに少し身体を堅くして、金平糖もらう子供みたいに一寸を早く早くって待つの。

「そうだねぇ」

言いたいことも言えなくなるなら、アタシはオトナなんかにならないわ。
秘密ばっかりなオトナにはならないわ。

「アタシ、今日はカレーが食べたいな」
「…ガキ」

ねぇ貴方、そうやってアタシをいつまでも子供扱いして笑ってみせて。
そうやってコドモみたいに無邪気にあの人を迎えてあげて。
ねぇ、子供だから許してよ、貴方を大人扱いすることを。


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