狼とクローバー | ナノ

ミルクレープ


この前はオーエンとキスしてるところをファウストに見つかってしまい大変な事になった。ファウストが『まさかお前達、付き合ってるんじゃないだろうな』と問い詰めて来た時、オーエンが『そうだけど』と答えていたからすごくビックリした。自分が賢者様に『付き合ってる訳ではない』と答えた後だったから余計に。オーエンの中では付き合ってる事になってたのか。というか、付き合うという概念を知っていたのか。

「世の中ではキスする男女を付き合ってるっていうんでしょ?」
「そうだけど…」
「ああ言っておけばファウストもまだ納得するだろうし」

確かに、付き合ってはいないけどキスする間柄ですって言われた方が、ファウスト的にも心象が悪いだろう。しかし当の本人は付き合ってるという事実だけでも心に来るものがあったみたいで、それを聞いた途端顔色を変えてフラフラとどこかに行ってしまった。後日フィガロ様が爆笑しながら『彼奴、ナマエとオーエンが付き合ってるのがショック過ぎて知恵熱出してたよ』って教えてくれた。大丈夫だったのだろうか。



「…そんな事よりさ」

オーエンの手が私の頬に添えられた。
オーエンが残酷な事をする魔法使いだと知ってるけど、私に触れる手はいつも遠慮がちだった。力一杯抵抗すれば、逃げられるくらい優しい手。オーエンの方を向けば、目を閉じたオーエンの顔が近づいて来た。同じく目を閉じれば、唇に柔らかい感触が落ちて来た。

「んっ…」

前までは押し付けられるか触れるだけだった唇も、今は軽く吸い付いて来たり、唇を食まれたりするようになった。ちゅ…と音を立てて上唇を吸われると、何だか恥ずかしくなる。
もっともっと求めるようにキスをしてくるオーエンに私は逃げ腰になってしまい、反射的に身体を後ろに傾けようとすれば、そのままソファーに押し倒されてしまった。

「オー、エン…」
「………」

キスの合間に名前を呼べば、顔を離したオーエンと目が合った。オーエンの視線は私の目を見て、その後唇に向かった。オーエンはキスをしたい時、私の唇を見てくる。してもいいのだけど、この体勢でするのは恥ずかしいからと、オーエンの身体を押し返す為に肩に手を添えようとすれば、そのまま指を絡めて握られた。

「もっとする」

起き上がりたいという私の意図を察したようだけど、応えてはくれないようだ。片手は繋がれ、もう片方の手は腕を握られ、抵抗出来ないようになってしまった。
私はまだ大人と呼ぶには若いかもしれないけど、純粋な子供でも無いから、キスより先の行為がある事くらい知ってる。オーエンに押し倒されて、腕を抑え付けられて、この後いつもと違う事が始まってしまう気配を薄々と感じ取ってしまった。

「ナマエ」

薄っすらと目を開いたままのオーエンが顔を近づけて来て、恥ずかしくて私はギュッと目を閉じた。その後唇が2、3回ねっとりと吸い付かれて、一度止まったかと思っていたら、ぬるぬるざらざらとしたものが唇を這った感覚がした。

「っ…!」

それが舌だと頭では分かったけど、人に唇を舐められた事なんて初めてだったから、理解するまでに時間がかかった。オーエンの舌は私の閉じられた唇の境目を物欲しそうに撫で回した後、そっと口の中に侵入して来た。

「んんっ」

どうしようと緊張していれば、私の舌先にオーエンの舌が触れた。私の身体は驚いて跳ねたけど、オーエンの身体もビクリと飛び跳ねていた。

「はぁ…」

オーエンは一旦唇を離すと、息を整えるように吐息を吐き出していた。興奮しているのか、いつもより息遣いが荒い。まるでケダモノのような目で私を見つめてきて、無意識にオーエンに握られた手をギュッと握った。

「ねぇナマエ」
「どう…したの?」

切迫つまった声で呼ばれて、私も声を震わせながら返事をした。

「今日は絶対キスしかしないから」
「…うん」

その言い方だといつかキス以外のことをすると言っているように聞こえたけど、そこに突っ込むだけの余裕は無かった。

「今から僕がすること、全部許して」

そう言いながら、頬に優しくキスをされた。そんな可愛い行為だったら全然…と思い、首を縦に振れば、堰き止められた何かが溢れ出したかのように激しく唇を奪われた。

「んんんっ…」
「ん…」

先程と同様に舌先同士が触れ合ったかと思うと、感触を確かめるように擦り合わされた。さっきは感じる余裕が無かった他人の舌の味を、私は今日初めて知った。唾液をまとったオーエンの舌が執拗に私の舌を舐めまわしてくる。何も知らなかった時の私は、舌を絡め合う行為の何が気持ちいいのだろうと思っていたけど、下腹部が熱くなっていく感覚がして、自分も興奮しているのだと気がついてしまった。

「んっ……ふぁ、ん、ぁ……んんん……」
「っ…バカ、あんまり煽るな」

そんな事を言われても煽ってるつもりは無い。唇を離した時に、今度は透明な糸で繋がっているのに気がついて顔に熱が集まった。

「はぁ…はぁ……」

こんなに息絶え絶えなオーエンは初めて見たかもしれない。オーエンは私の首筋に顔を埋めながら息を整えると、胸元にキスをして来たので思わず変な声が出てしまった。

「ぴゃっ」
「…………」

オーエンは据わった目で私を見た後、またキスを再開した。
くちゅくちゅと舌を絡められて、口の中がオーエンの唾液でいっぱいになって苦しい。どうしたらいいの分からず限界が来たので喉を鳴らして飲み込めば、「いい子」と頭を撫でられた。




「…いつかさ、」
「うん」

ある程度満足したのか、激しかった舌の動きは徐々にスローダウンしていった。最後は私の方が息絶え絶えになったけど、オーエンの方は余裕が出来たのか、今は私の口の端から溢れた唾液を舐めとっている。

「いつか、キスの続きもするつもりでいるから」
「ひぇ…」

とんでもない予告をされてしまい身体が強張った一方で、オーエンはそういう行為がある事を知ってたんだと変に驚いてしまった。


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