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「○○と居るようになって、きっとレンはありのままを出せてるはずだよ」



よかった、とぽんぽん頭を撫でるお兄ちゃんの顔は酷く優しかった。



「まさかとは思うけどそれが目的で私にレンを預けたの?」



「それがないとは言えないけどちょっと違うかな。ほら、外にいないで中に入ろう。皆いるよ」



お兄ちゃんは科学者になると言ってから家を出て、何らかで成功してからはこの大きなお屋敷に住んでいる。


1人で寂しくないのかな?なんて考えた頃もあったけどその必要はないみたい。



「レン?行こうよ」


反応無し。

下を向いたまま動こうとしない。



「レン...?そんなにダメージ受けたの?お兄ちゃんに気付かれたくなかったとか?」


様子が変...?

肩に手を乗せるとガッと捕まれた。



「違、...っはぁ、...はぁ...!」


何...?
どうしたの?
息遣いが荒く、頬をほんのり染めるレンは苦しそう。



「お兄ちゃん!!」


こんな苦しそうなレンを見ていると私も苦しくなってきた。


異変を察してくれたのかお兄ちゃんはレンを調べる。


「んー。どこも異常ないんだけど...あ、○○ちゅーちゃんと唇にした?」



「な、なにか関係あんの?」


「うん、あのね」




お兄ちゃんが何か話だそうとしたその時近くの壁に追い込まれた。

背中に当たる壁は冷たくて顔の真横に手を付かれて身動きが取れない。



「いきなりなんなのよ!!」


「ご、めん...はぁ...ヤバ...い...っ!!」


すぐ目の前にはレン。
周りにはお兄ちゃんとカイト。
人が居るのはこの上なく恥ずかしい!!


「変な事してないで早...!!!」


首筋にかぶりつくレンは物語でみた吸血鬼みたいで眩暈を起こしそうだった。


「...っ!!」


急に生温い感触からピリッとした痛みに変わった。


肩を押しても体格と力の差からかビクともしない。




「あーあ。ちゃんと話聞かないから駄目なんだよ。成長剤ウィルスには特殊な媚薬が入ってて、それを制御するには初めにキスをちゃんとして本能を押さえとかなきゃ、こんな事になります」


なんなんだよそのシステムは!!!


「説明してな、で...!!助けなさいよ!!」



「助けるって言っても止めたらレンが可哀相だよー」

「マスター、外でヤるのはどうかと思いますよ」

てめぇ...クソ兄!!
実の妹が襲われてるのに助けないってなんなのよ!!
カイトもっと言ってやって!!


「なんなら混じってもいいで」



「変態ばっかりかァァァァァァァァァァァァ!!!
助けてくれないとお兄ちゃんなんて大っ嫌いになっちゃうからね!!」


一瞬でも王子様なんて思った私はどうかしてた!!!


「え!?それはヤダ!!レンーはい、これ」



いつのまにか、それとも常備しているのかパクっとレンの口にバナナを入れた。





シーンと静まり返る。






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