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レンがあんまりにも遅いから、もう帰ってるかもって思って理子たちに言って先に帰る事にした。


…ちゃんとメイド服は着替えた。


じゃないと寒いし、ただの頭おかしい人じゃん!!




相変わらずレンは電話にも出ないし、メールも駄目。
…何かあったの?




すると、ポツ、となにか私の顔にかかった。






「うっわ!!雨降ってきた!!」







開けてた携帯を勢い良く閉じて家へと猛ダッシュ。


昼間あんなに晴れといてこの仕打ちは何よ!!


ザー、とバケツをひっくり返したかのような雨が降り注ぐ。





雨が降ってるからと言って運動神経が良くなるはずも無く走る足は重いけどなんとか完走しきった。






「やっぱり帰ってる」







メールの一つ位くれたっていいのに。
扉から光が漏れてるのは何よりの証拠だし。







雨によって冷え切った身体をなんとか動かし家の中へ。














そこで私を待っていたのは、「おかえり」と言ってくれるレンじゃなかった。
































「な…に?」














ドサ、と学生カバンが床にぶち当たる。



























私は目の前の状況が受け入れられなかった。
否、受け入れたくなかった。













「…レン、レン!!これ、何、新しい遊び?」








ねぇ、何か言いなさいよ!!
声にならない。








リビングの近くで横たわるレンを見て訳が分からなくなる。


頭が混乱して何が、何をすればいいのか。


真っ白な脳は役に立たない。








近くによってレンを上に向かせる。




目は、開いてる…。






でも何処を見ているのか分からなくて焦点が合ってない。





どうしたらいいの?これは病院に行くべき?


それとも他の何か?





分からない、ワカラナイ。





どうすればいいの…?







何も出来ない私はレンを膝に載せた。
すると、レンは何回か瞬きをする。









「よかった…」




元に戻った、と胸を撫で下ろした。













「ん…?あ、マス、ター…?」













え…?












「レン、何言って、」











するとレンは私の服をぎゅう、と掴んできた。


窓もなにもかも締め切っているのに雨の音は大きく私の耳に入り込んでくる。





不安にさせる音、不安を煽られる音。












「お、れ…マスターが、望むなら…なんでも、する…よ?」














「…レン?」









さらに服を掴む手に力が入っていた。



虚ろな瞳は何も映していなくて、なにもかもが遮断されてるよう。





ねぇ、何言ってんの…?









「もっと、じょ、ず…に歌、う…から。捨て、な…で!!」









「レン…!レン!!」










いくら話しかけてもレンは私を見てくれない。


誰かに、他の誰かに話してる。
マスター…これは、お兄ちゃん…?





うわごとの様にまだ、何か続く。













「マスターが、のぞ、む…なら、なんだって…マス、ター…が望むなら…」






その後もずっと捨てないで、を繰り返すレン。







これは異常だ…!




普通にマスターの存在を慕ってるようには見えない。










「…レン…ッ!!」









胸が、胸が苦しい。
これは何?
レンは何に訴えてるの…!




自分の事じゃない、ましてや何の事か分からないのにレンを見ていると涙が止め処なく溢れ出ていた。




喉の奥が熱くなって、目の前の出来事になにも行動が起こせないでただ無力さを知らされる。
自分の無力さに悲観してる暇じゃない事くらい分かってる。
でも、何も、出来ない!!








今、レンは普通じゃない。






人間じゃないから病院だってお門違い。





これは、何…!!


















突如、雨の音とともに携帯から着信音が流れ出た。





…今、話すのは無駄。


時間の無駄。



でも、ただこうしているのも時間の無駄には変わりない。











「…レン…!」







まだ捨てないで、と言い続けるレンの頭をぎゅう、と抱え込む。



きゅう、と鳴る胸は今にも握りつぶされそう。









「捨てない、…捨てないよ!!捨てないから…レン…!!」



今、何が起こってるの...?












いまだに携帯は鳴り止まない。











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