えー。
やだ。
凄く嫌だ。
教えてくれないのに
隣で見てるだけなの?


「嫌そうだね。」
「ビルはすーごく
 楽しそうだね。」


ビルは教科書を
ぱらぱら開いた。
そして私の前に置いた。


「はい。
 このページ全部覚えて。」
「えー!」
「早く。
 十分以内に。」


鬼だ!
私は教科書に飛び付いた。
ビルは隣でニヤニヤしている
気がした。
私の反応を見て
楽しんでるんだ。
でも十分で覚えないと、
何やらされるか
わからないし。


もう覚えるしかない!


「必死だね。」


ビルは隣で肘をついて、
私の顔を覗き込んできた。
相変わらずニヤニヤしてるし。
じーっと見ている訳だから
視線を感じて気になるし。


「・・・ビル?」
「ん?」


ニコニコしているビルと
目が合って、
ドキッとした。


「気が散るんだけど・・・、」
「そう?
 集中力足りないね。」


ビルは私の髪に
手を延ばした。
くるくるしたり
指で絡めて遊んでいる。


なんかね、
凄く恥ずかしい。
顔に穴が空くくらいの
視線を感じて、
気にしないでいられる
はずがないじゃない。


「ビル、
 いつものビルじゃ
 ないみたい。」
「いつもの俺って、
 どんな感じ?」


ニヤニヤしている
ビルを無視して、
私は視線を教科書に戻した。

[ 53/59 ]

[] []