振られる。


本能的にそう思った。
振られる。
この関係の終末が
目前だった。


「・・・や、だ。」


玄関ホールから出たところで、
私は小さく呟いた。
外の空気は
ひんやりとしていて、
冷たい風が髪を揺らした。


ビルは振り向いて、
訝しげな目を私に向けた。
目が合っただけで
ドキッと鼓動が早まる。


ビルって、
やっぱりかっこいい。


「ラミ?」


泣きそうな私の顔を
彼は心配そうに
覗き込んだ。


「・・・ごめっ、
 やっぱり、やだよ・・・、」


泣くまいと思っても、
涙は溢れる。
嫌われる。
私どれだけ
自己中なんだろ。


溢れてきた言葉を口にして、
いざ振られるって時に
逃げ腰だなんて。


「ラミ?
 どうしたの?
 そんなに・・・やだ?」


視線を上げると、
ビルの優しい表情が見えた。


「自己中だけど、
 でもビルとは・・・
 ずっと友達でいたいの。
 お願い・・・、
 振らないで。」


うざい女だ。
勝手に告白したのは
私なのに。


ビルはずっと黙っている。
何も言ってくれない。
きっと愛想をつかされたんだ。


いくら待ってもビルは
何も言ってくれないから、
私は顔を上げて、
ビルの様子を伺った。

[ 44/59 ]

[] []