でも、
私の好きな人のことを
ビルに否定されたと思うと、
何とも言えない感情が
胸を覆い隠した。
ビルは、
私の好きな人がビルだったら
困るのかな?
だから私が答える前に
否定しちゃったのかな?


「どうしたの?
 眉間、
 皺寄ってるけど。」


いつの日か、
彼が私の眉間を指差したように
微笑みながら、
私の眉間を指差した。


ああ、
あの日だ。
告白された時に、
助けてもらった日。
ビルのことを
見ているだけだった
毎日から、
解放された日。
諦めかけてた
ビルへの想いが、
溢れてきた日。
私の運命が、
変わった日。


「・・・好きよ。」


出ていた言葉に、
ぎょっとした。
今私、
なんて言った?


星が綺麗だったあの夜から
隠しつづけたこの気持ちを、
サラっと口にしていた。


「え?」


当然の反応を
目の当たりにして、
目が泳いだ。


「・・・ま、
 間違えましたっ!
 セレーナーっ!」


一度だけ深く
頭を下げてから、
ビルの目を一度も見ずに
私は一目散に
大広間に逃げ込んだ。

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