ああ、まずい。
脳卒中になりそうなくらいの
衝撃に足は震える。
何かを言わねばと、
唾を飲み込み、
出てきた言葉は
恥ずかしいくらいに
かすれていた。


「・・・い、いいの?」
「もちろん!」


だから至近距離での笑顔は
やめてってば!
心の中で今までにない程の
大きな声で悲鳴を上げたけど
誰も助けてくれなかった。


「ビ、ビル。」
「ん?」
「おや、・・・、おやすみ」


一回噛んだ。
恥ずかしい。
ウィーズリー、
ビルはそんな私に笑った。


「おやすみ、
 ヘンリー。」


監督生の責務を果たすために
談話室から出て
行こうとする彼に、
私は思わず大きな声を出した。


「わ、私のことも!」


ビルはゆっくり振り向いた。
心臓がこれまでにないくらい
元気に活動していた。
別に告白する訳でも
ないのにね。


「私のことも・・・」
「ラミ、」


言いかけた時、
それはビルによって
遮られた。
彼の声で呼ばれる
私の名前だけが
この世で価値のある物に
思えた。


「また明日ね、
 ラミ。」


ビルは談話室から
出て行った。

[ 27/59 ]

[] []