「そんなの、
 授業の内容じゃないよね?」
「ちょっと、
 色々あって。」


考えすぎだ。
僕が人狼だなんて
ラミは知らない。
知るはずがない。


「誰か知り合いに、
 人狼がいるのかい?」


僕は彼女から
視線をそらしながら
尋ねた。
臆病者め。
自分を罵りながらも
返答を待った。


「…うん。
 大切な人が。」


じゃあラミは
家族かなんかに
人狼がいるんだ。
可哀相に。


「……そうか。」


じゃあラミにはきっと
人狼に対する偏見がない。
そこは安心すべきところだ。


「リーマス、
 怪我してる。」


ラミは僕に歩み寄り、
頬の擦り傷に触れた。
その傷は昨夜
暴れた時できた傷だった。
すぐ隣で僕の頬に
触れるラミを
これほどまでに憎いと
思ったことはない。


今まで溜めてきた思いが
一気に溢れた気がした。


僕は頬に
触れている方の手を取り、
立ち上がった。
がたっと音がした。
そして逆側の手も取り、
ラミの両手を
窓に押し付けた。


ラミから小さな
悲鳴が上がると同時に、
彼女が持っていた本が
音を立てて床に落ちた。
表紙に描かれた狼が
じっと僕を見上げていた。

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