使えない奴らは放置し、
とりあえず図書館に
向かってみた。
きっと誰か同級生が
昨日出された魔法薬学の
レポートを書いているだろう。


本棚に挟まれた
窓際のテーブルを
一つ確保し、
他のテーブルを
探して回ったが、
特に知り合いは
見つからなかった。


「リリー!
 本高くて取れないの
 手伝って!」


特別僕の耳に響く
彼女の声を
素早くキャッチした。
こんな時にもラミかよ、
と呆れつつも
視線を向けてしまった。


「もう少し待って。
 今手が離せないの。
 大きい人探して
 取ってもらって。」


軽くあしらうように
彼女は言った。
するとラミは
頬を膨らませ、
本棚に戻って行った。


エバンズに課題の内容を
聞こうかと思ったが、
それよりも先に
エバンズの言葉が甦った。


ラミより大きい人
って言ったら
たいてい男じゃないか。
本を取ってあげるのも
他の男がするのは嫌なのか
と自分でも信じられなかった。


僕はいつからこんなに
嫉妬深くなって
しまったのだろう。


ラミの跡をつけると
本棚の一角で必死に
ぴょんぴょん跳ねる
彼女の姿があった。
近くに男はいたが
自分から頼る真似は
しないらしい。


ラミの姿に僕は
顔を綻ばせながら
彼女に近寄ろうとした。


もう少しだけ、
早かったら。

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