それに聞き間違いじゃない。
彼女は今僕を
リーマスと呼んだ。
名前で呼んでくれた。
この間言ったことを、
彼女は了承してくれた。


「いや、
 具合悪いのに…
 迷惑だったかなって。」
「迷惑なはず、
 ないよ。」


彼女の膝の上で
固めた拳を、
僕はそっと触れた。
ラミはいったい
何を心配しているんだろう。
僕が嫌がるはずが
ないのに。


「これ、
 魔法史のノート。」


ラミは僕に
羊皮紙の束を差し出した。


「ブラックがね、
 凄い勢いで
 頼み込んで来て。」


その時のことが
そんなに面白かったのか、
彼女は口元を抑えながら
笑った。
勝手なことをするな、
と思ったが、
やっぱりラミが
来てくれたのは凄く
凄く嬉しいから、
シリウスに一つ
借りを作ってしまった。


「ああ、
 ありがとう。
 助かるよ。」


僕は素直にそれを
受け取った。
すると何も話題がなくなり
沈黙が漂った。
でもラミは
戻ろうとしない。
僕が訝しげに彼女を見ると
慌てて顔を俯かせた。


何だろう?


そう思った時、
再び医務室の扉が開いた。


「やあやあムーニー!
 調子はどうだい?」


現れたジェームズ、
シリウス、
ピーターに
僕はあからさまに
肩を落とした。

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