昨夜シリウスが
言ってたことは
どうやら事実のようだ。
廊下で楽しそうに
レイブンクローの男と話す
ラミの姿を見かけた。


僕は駄目だけど
彼ならいいらしい。
自分を嘲るような
乾いた笑いが出た。
馬鹿みたいだ。
一人で勝手に期待して、
一人で勝手に調子に乗って、
一人で勝手に失恋した。


満月が近いらしい。
腸が煮え繰り返るくらい
イライラした。
満月が近いだけじゃない
ってことは分かったけど。
僕はそれを認めるくらい
素直にはなれない。


「シリウス、
 医務室に行ってくるから
 次の授業よろしくね。」
「もうそんな時期か。
 ゆっくり休めよ。」


本当はそこまで
具合は悪くなかった。
でも廊下にいたくなくて
今はラミに会いたくなくて
僕はずる休みをした。


廊下にラミの笑い声が
響いた気がした。
他の生徒もたくさんいたのに
ラミの声が
大きいんじゃなくて
彼女の声は何故か
僕の耳に届く。
どんなに遠くにいても、
届く気がした。
もちろん僕の声は、
彼女には届かないけどね。

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