顔を真っ赤にして
ラミは僕を睨んだ。
でもそんなの、
僕には効かない。
ふ、と笑うと
ラミは視線をそらした。
顔を横に向け、
僕から遠ざかろうとした。


「ち…、
 近いよ、ルーピン。」
「僕、ラミには
 リーマスって
 呼ばれたいな。」


終始笑顔で言うと、
ラミは目をつぶった。
僕を見てほしくて、
更に彼女に歩み寄った。
鼻と鼻がぶつかるくらい
ラミの顔を
覗き込んでみた。


睫毛がふるふると
震えていた。
肩も縮こまっていて、
なるべく体を
小さくしたいらしい。


「ラミ、
 言ったよね?」


囁くように言うと、
あまりの近さを
感じたようで、
ラミはビクッと
肩を揺らした。


「何を?」
「好きだけど、
 突然恋人には
 思えないって。」


彼女は小さく頷いた。
僕は一度彼女から
顔を離した。
ラミはまだ
目をつぶりながら
肩を震わせていた。
だから今度は、
耳に唇を寄せてみた。
横を向くラミは
右耳を僕に差し出している。
勝手にそう解釈して
耳を隠している髪を
ラミの耳にかけた。


現れた耳は、
とても赤かった。


「じゃあ、
 突然じゃなくて
 ゆっくりでいいから」


耳に唇をつけ、
甘い声で囁く。


「…っふ…」


吐息に感じたのか、
ラミは小さく声を
漏らした。
やばい。
可愛い。
理性を保つので必死な僕は
言葉を続けた。


「僕のこと、
 恋人として
 見てよ。」


誰もいない廊下で、
誰も助けに来なくて
この状況を終わらせることが
出来ないとラミは
気付いたのだろう。
僕の胸を彼女は、
力いっぱい押した。
細い腕で拒絶をするように
僕を押した。


「ルーピン!
 よ、用事思い出したのっ」


残酷な女。
彼女の力には僕は
負けなかったけど、
僕は自らどいてやった。
すると彼女は
一度も振り返らずに
グリフィンドール寮に
走り戻って行った。

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