人狼だという
いつか必ずばれる
秘密を隠し
彼女と結ばれる
夢を見つづけた。
拒絶されても
淡い期待を持ち続けた。
少しでも意識、
してくれたんじゃないかって。


「……ごめん。」
「それは何に
 対しての謝罪?」


ラミは赤い顔を上げた。
本日何回目かの
視線が再び絡まった。


「嘘…。
 今日は、ちょっと
 本当にちょっとだけ、
 ドキドキした。」


左手を壁から
離さなくてよかった。
きっと彼女は今すぐ
逃げ出したい思いで
いっぱいだろう。


「うん、やっぱり。
 目は合うし、」


僕はすぐに調子に乗る。
でも駄目だ。
そんなことを
言われたら、
にやけるなって言う方が
無理に決まってる。


僕はそっと彼女の顎に
手を添えた。
そして少しだけ
力を入れれば、
彼女の俯かせた顔は
呆気なく上を向いた。
彼女は今日で一番
赤い顔をしていた。
僕を見上げるその瞳は
微かに濡れていた。


ああ、
恥ずかしいのか。


「僕のことは
 避けるし、」
「ル…、ピン」


彼女の唇から
僕の名前が出る。
彼女の声が
僕の名前を呼ぶ。


「様子は変だし。
 昨日、何かあったの?」


意地悪な質問が
彼女を追い立てた。

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