思わず僕は笑った。
すると更にラミが
赤くなるのが分かった。
顔を俯かせて
この状況に羞恥を
覚えているんだろう。


だって彼女の横は
僕の左手と甲冑に、
前後は壁と僕自身に
挟まれて
身動きが取れない訳だから。


誰もいない廊下。
沈黙が残酷なほどに
鼓膜に突き刺さった。


ラミは必死に
この状況から
目をそらすように
ぎゅっと目を
つぶっていた。


君の瞳には今、
僕は映っていない。


「そんなに
 嫌かい?」


弱々しい僕の声。
振られて昨日の今日で
こんな迫るようなことをして
嫌われるのは
目に見えていた。


「……ごめん。」


そっと彼女の頭を
優しく撫でてみた。
ぴくりと肩を震わせたが
僕の手を振り払いは
しなかった。


「嫌じゃないよ」


ラミの言葉に、
僕の手は止まった。
嫌じゃない?
彼女が上げた顔は
再び赤みを帯びていた。


「ルーピンのことは
 好きよ。
 嫌じゃない。」


残酷な言葉だ。
結局友達止まりだって
言い聞かされているみたいで
無性に耳を
塞ぎたくなった。


「……“良い人”?」
「え、うん。
 とても…」


うんざりだ。
僕は今まで、
ラミにそう思ってほしくて
生きてきた訳じゃない。


“良い人”だなんて
ただの言い訳だろ?
気持ちに応えられないけど
友達ではいたい。
彼女はエゴイズムの
塊だと思ったけど、
一番のエゴイストは
僕なんだということは
最初から知っていた。

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