走って追い掛けると
ラミは大理石の
階段を上るところだった。


「ラミ!」
「ルーピン?」


彼女は振り向いて
僕の顔を見るなり
止めた足を動かした。
そうはさせまいと
僕も階段を
駆け上った。


彼女はグリフィンドールの
談話室に戻ろうと
したのだろう。
階段の先を
左に曲がろうとした。
だがそうはさせない。
逃がさない。


僕はラミの腕を
しっかりと掴んだ。
思ったより細い。
その腕を引っ張り、
右側の廊下に連れ込んだ。


グリフィンドール寮は
階段を上って左。
右の廊下には
空き教室しかない。
誰もいない廊下に
僕とラミだけ。


彼女の腕を引っ張って
壁に背中をつけさせた。
この廊下は甲冑が多くて
ラミのすぐ右側には
錆びれた甲冑が立っている。
僕はすかさず
彼女の左側に手をついた。


「ど、
 どうしたの?」


不安げに僕を見つめる
彼女の瞳が好きだ。
顔が赤いのも、
気のせいじゃないだろ?


「ラミさ、
 もしかして僕のこと
 意識してる?」


嬉しくて顔が綻ぶのを
彼女に隠すため、
不自然に笑ってみせた。
まあ向こうから見たら
不敵な笑み、
ってとこかな。


「別にしてないよ?」


思いっきり彼女の声が
震えているのが
僕にでも分かった。

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