05


幼なじみに戻った私たちは今日も一緒に登校。ブン太の自転車の後ろに乗って、私の特等席に勝手に優越感を抱いて。


「名前ー!ご飯行こ。」


まりなの声に、浸っていた優越感を振り払い、机の脇に掛かっていたお弁当を持って隣の教室に向かった。お弁当仲間は同じI組のまりな、B組の鈴枝と凜子。凜子の席は、ベタな窓際。だから昼食時はそこに集合にした。


「あー、名前ー。」
「んー?」


興奮気味の鈴枝に適当に返して、凜子の机を隣とくっつけて、前の席から椅子だけ調達。こうやって四人で座るのだ。私は窓際の凜子の向かい。隣はまりなだ。


「今日体育で男子サッカーだったんだけど、丸井キメてたよ〜。」


心底どうでもいい。というような顔を見せる。彼女達は、私とブン太が幼なじみだということは知ってる。だけどおそらく、恋心までは知らない、はず。鈴枝と凜子はブン太と同じクラス。授業中のブン太を見れない私からしてみれば、やはり羨ましいポジション。


「そっか。どうでもいいよ。」


お弁当の蓋を開け、米の固まりを箸にのっけた。そこで前方から鋭い視線を感じる。凜子が私を見ていた。


「何?」
「……別に〜?あ、丸井と言えば、今サッカーしてるじゃん。」


そう言って凜子は窓の外を指差す。そちらに視線を向けると、校庭の真ん中でサッカーボールを追い掛けているブン太がいた。


「おっ!仁王もいるじゃん。」


まりなが身を乗り出して言った。仁王君のファンらしい。ちなみに鈴枝は幸村君のファンだ。凜子はそういう憧れはいないらしい。


「ね、幸村君は?」
「いないね〜、残念!」


私はそんな会話を耳にしながら、校庭をじっと見ていた。窓が開いているから、ブン太の叫ぶ声が聞こえる。


「ジャッカル!」


あ、ジャッカル君もいる。ハーフの彼はサッカーの方が似合う気がする。


「ジャッカル桑原、ってどっちが名字なんだろね?」
「あははっ!確かに!」


鈴枝とまりなが二人で盛り上がっている。凜子は私と同様、外を眺めていた。


「妙技・鉄柱当てサッカーバージョン!」


ジャッカル君にパスをもらったブン太が、綺麗にシュート。見事ゴールの際に当たって入った。凄いなあ。ジャッカル君とブン太がハイタッチを交わしていた。そんな姿に思わず口元が緩む。そんな時だ。


「苗字さん!」


呼ばれた?校庭でこちらに向かって手を振っている男子がいた。宮本君だ。試合中なのに。宮本君が手を振っていると、他の人も立ち止まって何事かとこちらを見た。ブン太も、こっちを見た。じっと真っ直ぐこちらを見上げる。ドキリと心臓が鳴る。


「名前、シカト?」
「あ、あ、そっか。」


私は適当に手を振ってから、急いでお弁当に戻った。ブン太の前であんなことしてほしくなかった。


―――


オリキャラ満載…
名前とまりなとジャッカルはI組。
ブン太と仁王と宮本君と凜子と鈴枝はB組。

2011.12.25


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