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切原君に打ち明けられない気持ちがあるなら、私が聞いてあげる。そう彼に言ったら、今週ずっとここで一緒に昼飯食ってくださいとお願いされ、はや四日。切原君は今週一週間図書室の返却係を任されたらしい。クラスメートに頼まれた、って言ってたけど、引き受けちゃう辺りが私とは違う。


「偉いね、切原君。」
「あ、でもクラスメートの奴にケーキバイキング奢ってもらうんスよね。」
「なーんだ。見返りアリか。」


カウンター越しに切原君と会話。椅子を持ってきて彼と向かい合って昼食をとるのも、あと一日で終わる。切原君と一緒に昼休みを過ごすのも、終わりに近付いている。ま、それは別にいいんだけど。切原君、少しは元気になったし。


「そういや、来週の火曜って球技大会でしたよね?名前さん競技なんスか?」
「知らない。まだうちのクラスでその話出てない。切原君はテニス?」
「いや、俺はバスケっス!大活躍する予定なんで、見に来てください!」
「んー。ブン太の試合と被らなかったらね。」


なんか不思議。こうやってブン太ブン太って大好きな名前を気兼ねなく出せるのは、切原君との会話だけだ。皆の前では、こんなにブン太のことばかり話せない。だってそれは惚気になってしまうから。切原君には本心で語れるし、向こうも思ったことを話してくれる。最初はあまり好きじゃなかったけど、今はよき相談相手かな。切原君の存在に感謝しながら、私はお弁当の唐揚げを口に運んだ。その時、図書室のドアが勢いよく開いた。びっくりして切原君と共に顔をそちらに向けた。


「え?ブン太?」


予想外過ぎる顔に私は声をこぼした。だってブン太が図書室って似合わなすぎ。しかも、どこか纏っている雰囲気がいつもと違う。ってか怖い。ブン太は顔をしかめたまま、私の傍らまで来た。うん、怖い。


「お前何やってんだよ、こんなとこで。」
「いい痛い痛い痛い!」


頭わしづかみされた。それで前後に振られるとかほんと痛いから。って言うかブン太って身長の割に手大きいんだね。あ、私の頭が小さいのかな?そんで、切原君は何故かこっちをじーっと見ている。見てるなら助けてよ!と思ったら、ちゃんと口出ししてくれた。


「俺が相談のってほしいって頼んだんスよ。名前さんを責めないでください。」


ブン太の手が止まった。そしてすっごい機嫌の悪そうな顔を切原君に向けた。あれ?なんか、凄く空気が悪いような気がする。


「相談?なんだよ、それ。お前、仕返しのつもり?」


ブン太の低い低い声。それはまさに切原君に向けられたもので。ブン太はカウンターの下で、切原君には見えないように私の手をぎゅっと握った。胸がドキドキいってる。あ、そっか。ブン太は私に依存してるから、切原君に取られるかと思ったのかな。少し、嬉しい。でも、そこに恋愛感情はない。


―――


新テニプリ始まりましたね!
ブン太は妙技を披露してたけど喋ってない(;_;)

2012.01.06


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