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学校が憂鬱だ。昼休みはまだ始まったばっかりで、もう帰りたい。ジャッカル君と同じ教室で授業を受けたくない。さっきの女子は誰だったんだろう。私に恨みがあるのかな。


「名前…」


まりなは一応声を掛けてくれた。でもやっぱり一緒にご飯食べれなくて、私は自分の席でお弁当を開けた。一人の昼食はこんなに寂しいんだ。心が悲鳴を上げている。助けてよ、ブン太。


「よっ!」


ブン太は凄いよ。声に出さずとも、私のSOSに気付いてくれる。そうだ、中一の時、入学当初はブン太の幼なじみだからって嫌がらせを受けていた。でもブン太はすぐにそれに気付いて、主犯の女子に怒鳴り散らしたんだっけ。今も昔も、ブン太は辛い時に来てくれる。ずるいよ。


「昼飯、一緒に食おうぜ!」


開いたお弁当を包みに戻し、勝手に持って行こうとする。お弁当返せっ!、とブン太の後を追うが、食堂に着くまで返してもらえなかった。ブン太はお弁当をジャッカル君の前においた。は?ちなみにブン太はと言うと、ジャッカル君の斜め向かい。何、私にここに座れと?私を見た瞬間、ジャッカル君は凄く嫌そうな顔をした。それ、地味に傷付くからやめてよ。


「丸井、なんでこいついんだよ。」
「会議だろい?ほら、名前早く座れ。」


促されて私は渋々ジャッカル君の向かいに座った。気まずくて仕方ない。でも隣にブン太がいてくれるから。ネガティブな気持ちはどっか飛んで行った。


「ジャッカル君、私本当に言ってない。」
「はっ、どうだかな。」


聞く耳持たず。私は肩を落とした。テーブルの下で作った拳に、更に力が入った。そんな私を見て、ブン太は何を思ったのか、その拳に手を重ねてきた。マメだらけのブン太の手。ジャッカル君からは見えていない。何事かと彼を見ると、力強い視線が私に向いている。頑張れ、と彼が言っている。ブン太の手に包まれている私の拳の力が抜けていく。ありがとう、ブン太。


「…本当だよ。誰か分からないけど、二人の女子が勝手に言ったことなの。信じて。」


真っ直ぐ目を見て言うと、ジャッカル君の手が止まった。少しでも、信じてほしい。すると今まで黙ったままだったブン太が小さく口を開いた。


「二人の女子…?」
「うん。朝ね、人混みの中から、私に教えてもらったって声がして。顔はよく見えなかったけど、すぐ逃げられちゃった。」
「よし、ジャッカル!お前野崎連れて屋上に来い。」
「はあ?なんで俺が。」
「こないだ樋口貸してやったじゃん。何、やっぱり倍返しにしてほしいの?」


ジャッカル君が舌打ちをして了承すると、ブン太は私に笑顔を見せた。それはいつもと同じ、明るくて人を元気にさせる、太陽みたいな笑顔だった。


―――


樋口=五千円

2011.12.27


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