目が覚めると、そこはいつもの見慣れた天井ではなかった。いや、アンジェリーナ達の部屋もまだ見慣れたと言うには早いけど。でも、とりあえずそこは自室ではなかった。夜明け前のようだ。まだ眠い。体を起こすと、違和感に襲われる。まず最初に、そこは談話室のソファー。そして右手に、ジョージの温もり。


「…え?」


思わず繋がれた手を離そうとしたが、思いの外強く握られている。昨日何があったのか、思い出そうとしたが、ジョージにもらったジュースを飲んでから記憶が飛んでいた。


「ジョージ…」


ラミは繋がれていない左手をジョージの髪に延ばした。胸が擽られた。


しかしそんなことをしている暇はなかった。親切にもラミにはブランケットがかけられていたが、ジョージは何も羽織ることなく、しかも肩をソファーに預けているだけだ。つまり床に座ったまま寝た、ということで。ラミはそれに気付くと、飛び起きてジョージの肩を揺さ振った。


「ジョージ!起きて!」


何度も揺さ振ると、ジョージは目を擦りながら起き上がった。右手は繋がれたまま。


「ねみぃ…」


寝起きの顔を初めて見た。本当に眠そう。ラミは最後にジョージの頭を軽く叩いた。


「おはよう。」
「いてえよ…何?って、ラミ?なんでこんなとこに…」


驚きたいのはこっちだ、と少し不満を見せたが、途端にジョージはラミから飛び退いた。一瞬にして、ジョージの温もりが離れて行った。

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