ジョージは必死にラミから顔をそらすが、理性が崩れかけていた。ラミは相変わらずぎゅっと腕を組み、懇願していた。


無理だ。雰囲気に流されるのも、理性を保つのも、どっちも無理だ!


「ラミ、まずちょっと離れよう。」


そう言うと、ラミは更に距離を縮めジョージの肩に顔を埋めた。ちらりと彼女を見れば、絹のような艶やかな髪が視界に入った。途端にジョージに後悔の念が襲った。注意深く見ていれば、ジュースと間違えることはなかったのに。自分の過失のせいで今こんなにも辛い状況に陥ったのだ。


「ジョージ…好きよ、」


くぐもった声が聞こえた。耳を疑ったが、明らかにラミが発した声だ。ジョージはラミを抱きしめた。彼女の肩に顔を埋め、強く強く。腕の中でラミは目を丸くしていた。


「俺だって、好きだよ。」
「ジョージ…?」
「…俺の方がラミのこと好きだ。絶対。」


その言葉は微かに悲痛の色を見せていた。ジョージは分かっていた。ラミが酔っていて、明日にはこのことを忘れてしまっているであろう事も。ラミの“好き”とジョージの“好き”の意味が違っていることも。


ラミを腕に抱き、今だけは、と願っていた。

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