名門ヘンリー家。魔法界でその名を知らぬ者はおらぬと称される魔法使い一家だ。ラミはその一人娘。ヘンリー家の何が名門なのか、ラミには分からなかった。

ただ顔が良い。それだけ。それだけじゃない。


ヘンリー家は魔法界一の美人一家だ。整った顔と美しい蒼い瞳は代々受け継がれる。


入学当初はラミにも友人がたくさんいて、先輩からも可愛がられていた。だが、聞いてしまった。


一番の友人だと思っていた彼女が。ラミのことを悪く言っていた。それから度々言われるようになった。


美人は一般人の、気持ちなんて分からないわ。どうせ周りはみんな私の引立て役よ、とか思ってるんだわ。私は彼女の引立て役なんてなりたくないわよ。世界中の男が自分のものだと勘違いしてるんじゃない?


思ってもないことを言われ、ひどく傷付いた彼女の周りからはどんどん人気がなくなっていった。それからずっと一人。


そんな酷いことを言われるくらいなら、もう欲しいなんて思わない。


「…友達なんて、欲しくないもの。」


誰もいない湖の辺で、ラミは小さく呟いた。

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